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新型コロナBA.4およびBA.5株の病原性と増殖能はデルタ株より低い-東大医科研ほか

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2022年11月07日 AM11:09

患者から分離したBA.4株、BA.5株を用いて検証

東京大学医科学研究所は11月4日、新型コロナウイルスのBA.4系統または現在流行の主流であるBA.5系統に属するオミクロン株(BA.4株、BA.5株)に感染した患者の臨床検体からウイルスを分離し、その性状を解析した結果を発表した。この研究は、同研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature」オンライン速報版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

2021年11月に、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に少なくとも30か所の変異を有するオミクロン株が南アフリカで初めて確認された。オミクロン株は、少なくとも5つの系統(BA.1、BA.2、BA.3、)に分類される。オミクロン株の流行が始まってから数か月間は、BA.1系統に属する株(BA.1株)が世界の主流だったが、2022年1月上旬からBA.2系統に属する株(BA.2株)の感染例が増加し始め、同年6月にはBA.2株が世界でもっとも流行していた。しかし、2022年7月以降、日本を含む多くの国々でBA.2系統からBA.5系統への置き換わりが急速に進み、BA.5株が主流となっている。一方、南アフリカやボツワナなどの一部の国では、BA.4系統に属する株(BA.4株)の感染例が一時的に増えた。そこで研究グループは、COVID-19感染モデル動物のハムスターを用いて、患者から分離したBA.4株とBA.5株の増殖能と病原性をデルタ株やBA.2株と比較する研究を行った。

BA.4株、BA.5株の感染動物では体重減少や呼吸器症状の悪化を認めず

BA.4株の2株およびBA.5株の3株をハムスターに感染させたところ、BA.2株と同様に、全ての株において感染ハムスターは体重減少を示さなかった。一方、デルタ株を感染させたハムスターは全ての個体で体重が減少した。また、BA.4株あるいはBA.5株を感染させたハムスターでは、呼吸器症状の悪化も認められなかった。

BA.4株、BA.5株の増殖能はBA.2株と同程度、デルタ株より低い

ハムスターの肺や鼻におけるBA.4株とBA.5株の増殖能は、BA.2株と同程度だったが、デルタ株と比べると低いことがわかった。感染動物肺の病理解析を行ったところ、BA.4株およびBA.5株感染ハムスターでは、BA.2株感染ハムスターと同程度の軽度の炎症しか見られなかった。新型コロナウイルスの受容体であるヒトhACE2を発現するハムスターを用いた感染実験においても、BA.4株およびBA.5株の病原性と増殖能はデルタ株よりも低いことが明らかとなった。

2株同時感染実験、呼吸器での検出割合はBA.2株<BA.5株

続いて、BA.2株とBA.4株を同時に同じ個体に感染させ、どちらの株がハムスターの呼吸器でより増えやすいのか競合試験を行った。呼吸器で検出されたそれぞれの株の割合は、同程度か、ややBA.4株の方が高い傾向が見られた。一方、BA.2株とBA.5株を同時に感染させたハムスターの呼吸器では、BA.5株の割合が高いことがわかった。

BA.2株・BA.4株・BA.5株の3株間では病原性に違いがないと判明

BA.2株をもとに、スパイク(S)タンパク質のみをBA.4株やBA.5株と置き換えた組換えウイルスを用いた感染実験では、BA.4株やBA.5株のSタンパク質を有するウイルスの病原性がBA.2株よりも高いとする報告がある。一方、患者から分離したウイルスを用いた今回の研究では、BA.2株、BA.4株およびBA.5株の3株間では病原性に違いがないことが明らかになった。組換えウイルスではなく、患者から分離したウイルスそのものを感染させた動物の病態は、オミクロン株感染者の病態をより反映していると考えられる。「研究を通して得られた成果は、変異株のリスク評価など行政機関が今後のCOVID-19対策計画を策定、実施する上で、重要な情報となる」と、研究グループは述べている。

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