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コロナ禍の影響で、高齢者の移動動作能力3倍以上・柔軟性5倍以上低下-筑波大

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2022年10月26日 AM10:46

体力テストによる客観的な評価とコロナ流行前からの追跡で、流行による機能低下を検証

筑波大学は10月25日、コロナ禍で高齢者の移動動作能力が通常の1年の3倍以上低下していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大体育系の大藏倫博教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「日本老年医学会雑誌」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

COVID-19流行下において高齢者は、外出自粛による身体活動量の減少、下肢機能の低下、フレイルの進行など、健康や暮らしに大きな影響を受けたことが報告されている。

しかし、それらの多くは、アンケート調査による高齢者の主観に基づく評価であったため、具体的な機能低下の内容や程度については十分にわかっていなかった。そこで研究グループは今回、体力テストによる客観的な評価と、COVID-19流行前からの追跡を行うことで、流行下では通常の加齢変化よりも機能低下がどの程度生じているのか、また、機能低下の内容に男女で違いがあるのかについて調査した。

通常の加齢変化と比較し「複合的移動動作能力」「歩行能力」「柔軟性」が顕著に悪化

研究では、茨城県笠間市で実施している「かさま長寿健診」(2009年に開始された高齢者の健康、体力、身体活動に着目した中規模集団の追跡調査)に参加した地域在住高齢者(男性107人、女性133人、平均年齢73.2歳)を対象とし、2016〜2020年の4年間のデータを解析した。

その結果、COVID-19流行下では、通常の1年間で生じる加齢変化と比較して、体力(身体機能)が顕著に低下していることが確認された。男女ともに顕著に悪化が確認された体力テストは、Timed Up & Go(複合的移動動作能力)、5m通常歩行時間(歩行能力)、長座体前屈(柔軟性)だった。

女性のみ「上肢筋力」と「手指巧緻動作」が低下

Timed Up & Go では、体力テストの記録が通常の加齢変化の1年間で、平均して男性で+0.03秒、女性で+0.07秒遅くなる(=機能が低下する)のに対し、COVID-19流行下の2019年から2020年の1年間では、男性で+0.42秒、女性で+0.22秒遅くなっていた。

5m通常歩行時間は、通常の1年間では、男性で-0.04秒、女性で-0.01秒と、男女ともに通常の加齢変化では機能が維持されていたが、流行下の1年間では、男性で+0.19秒、女性で+0.15秒遅くなった。

長座体前屈でも、通常では、男性で+0.33cm、女性で+0.84cmと維持されていたが、流行下では、男性で-2.89cm、女性で-4.37cmと柔軟性の低下が見られた。

つまり、COVID-19流行下では、通常の1年間の加齢変化よりも移動動作能力が3倍以上、柔軟性は5倍以上低下したことになる。さらに、女性においてのみ握力(上肢筋力)は3倍、48本ペグ移動(手指巧緻性)では4倍、通常の1年と比べて流行下では顕著な悪化が確認された。以上の結果から、男女ともに移動動作能力や柔軟性が低下していることに加えて、女性でのみ上肢筋力や手指巧緻動作が低下していることが明らかになった。

男女ともに悪化した機能の維持・向上を意図した介護予防プログラムを優先的に行うことが重要

これらのことは、COVID-19流行下のような日常活動が制約される環境においては、男女ともに複合的移動動作能力、柔軟性の維持・向上を意図した介護予防プログラムを優先的に行うことの必要性を示唆している。さらに、女性に関しては、上肢筋力や手指巧緻動作への働きかけも必要と考えられるとしている。

身体機能低下が顕著な人の特徴や背景要因を把握し、具体的なアプローチ法の立案目指す

今回の研究により、地域在住高齢者の身体機能を体力テストで客観的かつ縦断的に評価し、COVID-19流行下での影響が明らかにされた。ただし、集団の平均的な体力の推移を観察したに留まり、個人ごとの影響の受けやすさなどは検証されていない。

「今後は、対象者の質問紙調査データを照らし合わせて、身体機能低下が顕著だった人の特徴や背景要因を把握し、高齢者の体力向上への具体的なアプローチ法の立案を目指す」と、研究グループは述べている。

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