医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > OSAのCPAP遠隔モニタリング、体重・血圧・歩数追加が減量支援に有用-京大ほか

OSAのCPAP遠隔モニタリング、体重・血圧・歩数追加が減量支援に有用-京大ほか

読了時間:約 3分35秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年08月24日 AM10:40

CPAPデータに体重・血圧・歩数データを追加で患者の減量支援が可能か?

京都大学は8月23日、持続気道陽圧(Continuous Positive Airway Pressure:CPAP)遠隔モニタリング中の閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea:OSA)患者の肥満に対して、日々の体重・血圧・歩数データを遠隔モニタリングし、管理・指導することの有用性を明らかにした研究結果を発表した。この研究は、同大大学院医学研究科呼吸管理睡眠制御学講座の村瀬公彦特定助教(研究当時、現:トロント大学リサーチフェロー)、陳和夫同特定教授(研究当時、現:日本大学医学部内科学系睡眠学分野睡眠医学・呼吸管理学教授(研究所)、京都大学大学院医学研究科ゲノム疾患研究所特任教授(非常勤))、同大大学院医学研究科呼吸器内科学の平井豊博教授、日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野の権寧博教授らを中心とする研究グループによるもの。研究成果は、「CHEST」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

OSAの標準治療はCPAP療法という、睡眠時に鼻(あるいは鼻と口)を覆うマスクを装着し、ある一定の陽圧を気道にかけるという医療機器を用いた治療法だ。CPAP療法を行うべき中等症以上のOSA患者は世界で4億人を超えると報告されている。CPAP療法は長期間継続することが重要で、インターネット等の通信手段を用いて、医療者が患者のCPAP機器の使用データを遠隔でモニタリングし、管理・指導することにより、機器の使用時間の延長につながることが研究グループの臨床研究を含めた複数の研究で明らかになっている。

一方、OSAの最大の危険因子は肥満であり、また、OSA患者は高い確率で高血圧や糖尿病といった生活習慣病を合併することが知られている。CPAP療法でOSAの治療を開始しても、肥満や高血圧が大きく改善することはまれで、生活習慣の介入を含めた包括的な診療アプローチがOSAの患者には重要だ。通信技術の進歩により、自宅で測定した体重・血圧・歩数などのデータをインターネットで患者から医療者に送信し、生活習慣病の指導に役立てることも可能となってきている。そこで、OSA患者がCPAP遠隔モニタリングを開始する際に、遠隔モニタリングの対象をCPAPデータのみならず体重・血圧・歩数へと広げることで、患者の減量を支援することができるのかを検証する臨床試験を実施した。

通常遠隔モニタリング群/遠隔減量指導群、半年間経過を観察

今回の研究では、日本の医療機関16施設で、CPAPの遠隔モニタリング中のOSA患者に、インターネットを介して測定記録を送信できる体重計・血圧計・歩数計を貸与。機器の使用方法を説明したうえで、測定結果を指定されたデータベースへ毎日送信するように説明した。そして、研究終了時に、開始時と比較して3%以上の体重減少を目標とすることとした。その後、参加者を①CPAPの使用記録のみを医療者が遠隔モニタリングし、管理・指導する群(通常遠隔モニタリング群)と、②CPAPの使用記録に加え、体重・血圧・歩数のデータも遠隔モニタリングし、管理・指導する群(遠隔減量指導群)の2群(各群84人)に無作為に割り付けし、半年間経過を観察した。両群とも3か月おきに医療機関を受診し、受診のない月では担当医が参加者のデータの遠隔モニタリングを月に1度行った。

この際に、通常遠隔モニタリング群では、担当医はCPAPの使用データのみを遠隔で確認し、参加者にCPAP療法のみに関するアドバイスを電話で行った。一方、遠隔減量指導群ではCPAPデータに加え、体重・血圧・歩数のデータも遠隔で確認し、目標としている体重を参加者とともに再確認し、減量を促した。減量指導の内容については、「体重はカロリーの摂取と消費のバランスで決まる」とのみ説明し、具体的な食事や運動の内容については明示しなかった。

減量成功は通常遠隔モニタリング群25%、遠隔減量指導群39.3%

その結果、減量に成功した参加者は、通常遠隔モニタリング群では25%であったのに対し、遠隔減量指導群で39.3%であり、統計学的解析の結果、遠隔減量指導群で減量成功者数が多かったことが示された。研究開始前後での体重変化で比べた場合でも、通常遠隔モニタリング群では平均-0.8kgだったが遠隔減量指導群では平均-2.4kgであり、遠隔減量指導群でより大きな減量に成功していた。血圧の変化について、両群で有意な差はなかったものの、研究期間中の毎日の歩数の平均は通常遠隔モニタリング群では3,592歩/日だったが、遠隔減量指導群では4,767歩/日であり、遠隔減量指導群で活動度が上昇していたことが示唆された。

これらの結果から、遠隔モニタリングの対象をCPAPデータのみならず体重・血圧・歩数へと広げることで、患者の生活習慣を改善し減量を支援することが可能であることを実証したとしている。

CPAP療法開始時から体重・血圧等の遠隔モニタリング効果を検証する研究も

OSAに合併する生活習慣病に対する有効な治療法の確立は臨床上の重要な課題だ。今回、研究で実証した遠隔モニタリングを用いたアプローチが、この課題の解決に貢献できる可能性が示された。また、この方法は、患者が頻回に来院する必要はない。新型コロナウイルスの蔓延から対面による診療・治療が困難となっている現状では、非常に有効な治療戦略になりえるとしている。さらに、OSA患者のみならず、生活習慣病を有する方全体への、遠隔モニタリングを用いたアプローチへ展開されることが、今後期待される。

今回の研究では、CPAP療法をすでに導入されている者が対象だった。「より早期からの介入の有効性を探るため、CPAP療法開始時から体重・血圧等の遠隔モニタリングの効果を検証する研究をすでに開始している」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • AIアプリ計測の歩行データからハキム病など3疾患の歩行パターン鑑別-名古屋市大ほか
  • 視野内の注目すべきエリアへの素早い反応を可能にする脳の仕組みを解明-都医学研
  • 骨格筋形成、カルパインによる転写調節タンパク質切断の重要性を発見-理研ほか
  • 筋ジストロフィー細胞治療、最も安全・効果的な候補はiPS細胞由来MSCs-CiRA
  • もやもや症候群、発症にかかわる遺伝学的なメカニズムの一端を解明-女子医大ほか