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糖尿病治療、膵島移植に最適な新規免疫抑制剤KRP-203を同定-東北大ほか

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2021年07月21日 AM11:15

現在の標準的免疫抑制剤、耐糖能障害や新生血管構築阻害作用の課題

東北大学は7月19日、糖尿病治療のための膵島移植に最適な副作用が少ない免疫抑制剤(KRP-203)を見出すことに成功したと発表した。この研究は、同東北大学大学院医学系研究科移植再生医学分野の後藤昌史教授、Ibrahim Fathi(イブラヒム ファティ)医師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Transplantation」に掲載されている。


画像はリリースより

糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度が高くなり、神経や腎臓の障害といった合併症を引き起こす疾患。重症化すると低血糖昏睡により、患者は精神的、肉体的、社会的に大きな負担を抱えることとなる。この現状を打開するための先端治療として、血糖調節ホルモンであるインスリンを分泌する膵島を患者に移植する治療法がある。

膵島移植は、脳死ドナーから提供された膵臓から膵島細胞のみを抽出し、糖尿病患者へ移植する治療法。この新しい治療法は、全身麻酔や開腹手術を一切必要とせず、点滴の要領で短時間に終えることが可能だ。そのため、従来行われてきた膵臓移植などの臓器移植療法と比べ、安全・簡便・低侵襲などの利点が着目され、次世代の中心的移植医療になると大きく期待されている。

一方、他の全ての臓器移植と同様に、免疫拒絶反応を制御するために生涯に渡る免疫抑制剤の服用が必須となる。現在の標準的免疫抑制剤であるカルシニューリン阻害剤は、移植された膵島細胞に対して耐糖能障害や新生血管構築阻害作用を示すことが広く知られており、解決すべき喫緊の課題となっている。

KRP-203、従来のカルシニューリン阻害剤とは異なる免疫調節機能

スフィンゴシン-1-リン酸の機能的アンタゴニストであるKRP-203は、冬虫夏草の培養液中から発見された化合物を化学修飾することにより見出された。従来のカルシニューリン阻害剤とは全く異なり、リンパ球の動きを封じ込めることにより免疫調節機能を発揮することが知られている。

そこで今回研究グループは、杏林製薬株式会社によるKRP-203提供の協力のもと、膵島機能と血管新生能に対するKRP-203の効果を糖尿病動物モデルで検証し、膵島移植におけるカルシニューリン阻害剤を含有しない新規免疫抑制プロトコールの樹立を試みた。

耐糖能障害や新生血管構築阻害作用なく移植後の拒絶反応を制御、動物モデルで

研究の結果、血糖値計測、糖負荷試験、分離膵島の機能評価により、KRP-203は耐糖能障害を惹起しないことが判明。また、多光子レーザー走査型顕微鏡の解析により、KRP-203は膵島の新生血管構築作用も阻害しないことが明らかとなった。

さらに、KRP-203は同種異系モデルにおける免疫拒絶反応を単剤でも効果的に制御することが可能であり(44%)、(カルシニューリン阻害剤ではない免疫抑制剤)との併用により、相乗作用を発揮することでより効果的に(83%)免疫拒絶反応を制御できることが判明したという。

同研究により、KRP-203は移植された膵島細胞の内分泌機能や新生血管構築能を阻害しない、これまでにない膵島移植に最適な免疫調節剤であることが明らかとなった。同研究は、KRP-203と低用量シロリムスの併用が膵島移植におけるカルシニューリン阻害剤を含有しない新規免疫抑制プロトコールとして有望である可能性を初めて示唆したものであり、学術的な面からも臨床的な面からも高い意義を有すると考えられるとしている。

糖尿病治療のほか、さまざまな細胞移植療法への応用に期待

今回見出した新規免疫抑制プロトコールは、これまでの課題だった耐糖能障害や移植膵島への新生血管阻害といった副作用を引き起こさないため、より安全な膵島移植が可能となり、今後の糖尿病治療に大いに役立つと考えられる。

また、今回の知見は糖尿病治療に留まらず、肝不全に対する肝細胞移植など、他のさまざまな細胞移植療法への応用が期待される、と研究グループは述べている。

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