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非小細胞肺がん、インテグリンα11を介するCAF活性化機序を解明-順大ほか

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2021年05月06日 AM11:30

がん間質を構成の線維芽細胞「」について遺伝子発現を網羅的に探索

順天堂大学は4月28日、非小細胞肺がんにおけるがん関連線維芽細胞(CAF:Cancer-associated fibroblast)に対して、CAGE法を用いた遺伝子発現の網羅的な解析を行い、細胞接着分子のインテグリンα11を介するCAFの活性化機序を解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科呼吸器内科学の高橋和久教授、十合晋作准教授、岩井萌大学院生らと、理化学研究所予防医療・診断技術開発プログラム(PMI)の林崎良英プログラムディレクター(研究当時、現:株式会社ダナフォーム)、伊藤昌可コーディネーター、川路英哉コーディネーター(現:東京都医学総合研究所)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Molecular Oncology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

近年、非小細胞肺がんは国内におけるがん死亡原因の第1位。昨今では分子標的治療薬の導入により薬剤療法の効果が認められるようになったが、非小細胞肺がんは予後が悪く、ほぼ全例で再発することが課題となっている。その理由は、がん細胞とがん間質を含めた肺がん組織において、薬剤感受性の多様性が存在するためと考えられている。また、がん間質の量やがん間質における線維芽細胞の増殖能の高さが予後の悪化と強く相関することから、がん間質の制御の重要性が指摘され始めている。

高い治療効果を得るためには、CAFと称される、がん間質を主に構成している線維芽細胞の機能を制御する因子の解明が必要と考えられる。そこで、研究グループは、このCAFの機能活性に直接関与する特異的制御因子を明らかにするため、理化学研究所が独自に開発したCAGE法を用いて、CAFの遺伝子発現を網羅的に探索した。

CAFでI型コラーゲン受容体「インテグリンα11」の発現増加

はじめに、がん間質中に集まるCAFの遊走能について検討。CAFは、周囲のがん細胞と相互に影響を及ぼし合う環境下において活性化し、がん細胞の進展を促進させる。その結果、がん間質から分離したCAFは、正常肺分離した正常肺線維芽細胞と比較して、がん間質中の主要な構成タンパク質であるI型コラーゲンやフィブロネクチンに向かう遊走能が活性化していることを発見した。

次に、このCAFに特異的な遊走能の活性化に関与している機能制御因子を探るため、CAGE法による転写プロモーター活性の網羅的解析を行った。その結果、I型コラーゲンの受容体であるインテグリンα11がCAFで高活性であること、タンパク質の発現レベルにおいてCAFでインテグリンα11の発現が増加していることが明らかになった。

TGF-β1がCAFのインテグリンα11/コラーゲンタイプXIαI発現増加、遊走能刺激

また、CAFを含むがん間質組織中のインテグリンα11の発現が高いほど術後再発を起こしやすく、進行病期によってその発現量が増加することから、インテグリンα11の発現と予後の悪化との相関性が確認された。

さらに、がん間質内のインテグリンα11の発現は、CAFの特異的マーカーとして報告されているコラーゲンタイプXIαIの発現と相関がみられ、CAGE法解析やタンパク質の発現レベルにおいても、CAFでコラーゲンタイプXIαIの転写活性や発現が高いことも明らかになった。一方、サイトカインのTGF-β1はCAFの遊走能を刺激するだけではなく、インテグリンα11とコラーゲンタイプXIαIの発現を増加させ、肺がん細胞がCAFに向かって遊走することもわかったという。

インテグリンα11+/コラーゲンタイプXIαI+CAFは新たな治療標的になる可能性

以上の結果から、CAFとがん細胞が互いに連携することでがん間質にがん細胞を取り込み、積極的にがんの進展を促進させるという、非小細胞肺がんにおけるCAFの活性化機序が明らかになった。つまり、インテグリンα11+/コラーゲンタイプXIαI+CAFを標的とした新たな治療法が、がんの進展をより効果的に抑制する可能性が示された。

CAFは多様性を持っており、これまでにさまざまな特異的なマーカーが報告されている。今回の研究では、その中でもインテグリンα11+/コラーゲンタイプXIαI+CAFの活性化が肺がんの進展に特に重要な役割を担っている可能性を明らかにした。「今回の発見は、がん間質に存在するCAFを標的とした従来の治療法とは異なる、新たな肺がん治療法への足掛かりとなる可能性がある。今後さらに研究を重ねることで、CAFの機能解明に関する研究は肺がん死亡者数の減少を導くブレークスルーとなりうることが期待される」と、研究グループは述べている。

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