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出生体重3,000g未満の日本人女性は妊娠高血圧症候群のリスクが高い-国がんほか

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2021年04月15日 PM12:00

日本人女性対象、、妊娠糖尿病との関連は

国立がん研究センターは4月14日、日本人女性約4万6,000人を対象に、自身の出生体重と、妊娠期における妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病との関連を調査し、出生体重3,000g未満の女性では、妊娠高血圧症候群のリスクが高いことが認められたと発表した。この研究は、同センターと、、国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部との共同研究によるもの。研究成果は、「Journal of Epidemiology」に掲載されている。


画像はリリースより

これまでの研究から、出生体重が少ない女性は、その成人期において高血圧、糖尿病や心疾患などのリスクが高いことが報告されている。また、欧米の疫学研究において、出生体重が少ない女性は、妊娠時にも妊娠糖尿病などを発症するリスクも高いことが報告されているが、日本人を対象とした研究は行われておらず、日本人での関連についてはよくわかっていなかった。

3,000~3,999gを基準に、5つのグループに分けて分析

今回研究グループは、2011~16年に、次世代多目的コホート研究対象地域(秋田県、岩手県、茨城県、長野県、高知県、愛媛県、長崎県)在住で、研究に同意した40~74歳のうち、妊娠を経験した女性約4万6,000人を対象に、自身の出生体重と、妊娠期における妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病との関連を調べた。

自身の出生体重と、妊娠時の妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病の有無は調査開始時のアンケートの回答から情報を取得。自己申告による自身の出生体重が3,000~3,999gを基準とし、その他の出生体重(1,500g未満、1,500~2,499g、2,500~2,999g、4,000g以上)とに分け、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病の有無との関連を検討した。その際、地域、出生年、教育歴、高血圧または糖尿病の家族歴、受動喫煙年数、身長、年上の兄弟の有無、初回妊娠時年齢、喫煙習慣、20歳時の体格を統計学的に調整し、これらの影響をできるだけ取り除いた。

出生時体重3,000g未満で妊娠高血圧症候群のリスク高、1,500~2,499gのグループは妊娠糖尿病との関連も

その結果、出生体重3,000~3,999gのグループと比較して、2,500~2,999g、1,500~2,499gおよび1,500g未満のグループで、妊娠高血圧症候群のリスクが統計学的に有意に高いという関連がみられた。出生体重が4,000g以上の場合においても同様に、妊娠高血圧症候群のリスクは高くなっていたが、統計学的に有意な関連はみられなかった。

出生体重と妊娠糖尿病については、出生体重3,000~3,999gのグループと比較して、1,500~2,499gのグループで妊娠糖尿病のリスクが高いという関連がみられたが、その他のグループでは関連がみられなかった。

低体重出生児で血管の内皮機能が弱く、腎機能が低下しやすいことなどが関連か

今回の研究成果は、アジア女性において、出生体重とその後の妊娠高血圧症候群および妊娠糖尿病との関連を報告した初めての研究だ。これまで、欧米の先行研究では、出生体重と妊娠高血圧症候群のリスクとの関連が報告されており、同研究においても同様の関連がみられた。メカニズムは明確ではないとしつつも、低出生体重児は、血管の内皮機能が弱いことや、腎機能が低下しやすいことが報告されており、このことが妊娠時に妊娠高血圧症候群のリスクと関連がみられた理由の一つではないか、と研究グループは推察している。

一方、欧米での先行研究では出生体重が多い場合、妊娠高血圧症候群と関連があることが報告されている。しかし、同研究では、出生体重4,000g以上(巨大児)だった女性は、妊娠高血圧症候群のリスクは高かったが、統計学的に有意な関連はみられなかった。この理由として、今回の参加者に出生体重4,000g以上と回答した人数が少なかったことが考えられるという。

また、出生体重が少なかった場合、成人後の糖尿病のリスクが高いことがこれまでに報告されており、今回の研究においても、成人後の糖尿病との関連と同様、出生体重が少ない(1,500~2,499g)グループでは、妊娠糖尿病のリスクが高いという関連がみられた。しかし、さらに出生体重が少ない(1,500g未満)グループでは妊娠糖尿病との関連がみられなかった。この理由も、今回の参加者に出生体重1,500g未満と回答した人数が少なかったことが考えられるとしている。

なお、同研究の限界点として、妊娠から出産までの期間が把握できていないこと、出生時体重を自己申告で行っていることなども挙げている。

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