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片頭痛で初の抗体製剤「エムガルティ」を発売-リリー

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2021年03月05日 PM01:30

今夏にも改訂の慢性頭痛の診療GLに抗体製剤の記載を追加

日本イーライリリー社は2月25日、片頭痛で初の抗体製剤となる「エムガルティ」(一般名:ガルカネズマブ〈遺伝子組換え〉)の製造販売承認を記念し、オンラインでプレスセミナーを開催した。セミナーで登壇した平田幸一氏(日本頭痛学会代表理事、獨協医科大学副学長)は、慢性頭痛の診療ガイドラインについて、「半年以内にも改訂版を発行する予定」と明言。内容はまだ調整中だとしつつ、抗CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)抗体薬による治療について盛り込みたいと意欲を示した。現行のガイドラインは2013年版で、8年ぶりの改訂となる。


抗CGRP抗体製剤の作用機序(日本イーライリリー提供)

エムガルティはヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤で、片頭痛発作時に上昇するCGRPの活性を阻害し片頭痛発作を抑制する新規作用機序をもつ。通常、成人にはガルカネズマブ(遺伝子組換え)として初回に240mgを皮下投与し、以降は1か月間隔で120mgを皮下投与する。12月に開かれた薬事・食品衛生審議会の医薬品第一部会で厚生労働省は、適応患者の選定や医療機関の要件、重篤な副作用が発現した際の対応などについて、今後作成する「最適使用推進ガイドライン」で示すとしている。

セミナーで平田氏は、片頭痛の社会的な損失への影響について、「片頭痛は1990年、2016年いずれの報告も、日常生活に支障をきたす疾患の第2位だった」と指摘。働き世代・子育て世代の女性で有病率が高く、労働生産性が低下していることも問題視した。その上で平田氏は、「発症抑制薬の使用により、発作頻度や重症度等が軽減し、生活への支障が緩和される」との考えを表し、「片頭痛治療は残念ながら今まで進んでいなかった。CGRPを直接阻害する薬が出てきたことで、これから治療が大きく変わっていくのではないか」と、抗CGRP抗体薬を用いた治療に期待を寄せた。

既存の予防薬や急性期治療薬との併用もありうる

エムガルティの国内第3相長期投与試験(CGAP試験)は、片頭痛患者(反復性/慢性)311例を対象に、多施設共同、無作為化、非盲検で実施したもの。非盲検投与期間は12か月。主要評価項目の安全性について反復性片頭痛では、エムガルティ120mg群の副作用発現割合が120例中39例。主な副作用は、注射部位紅斑21例、注射部位そう痒感17例、注射部位腫脹10例だった。重篤な有害事象は4例で子宮ポリープ、乳癌、急性胆管炎、靱帯断裂が発現したものの、同薬との因果関係は否定されている。投与中止に至った有害事象は不安障害(2例)、子宮筋腫、無力症、腎障害の5例。このうち、無力症と腎障害は同薬との因果関係が否定できないと判断された。死亡例はない。

一方、慢性片頭痛では、エムガルティ120mg群の副作用発現割合が32例中9例みられ、注射部位そう痒感5例、注射部位紅斑3例、注射部位疼痛2例だった。重篤な有害事象は1例で、ストレス心筋症が発現。同薬との因果関係が否定できないと判断された。投与中止に至った有害事象は注射部位そう痒感(2例)、ストレス心筋症の3例で、いずれも同薬との因果関係が否定できないと判断されている。死亡例はなかった。

同試験の副次評価項目には、1か月あたりの片頭痛日数のベースラインからの変化量、免疫原性(抗ガルカネズマブ抗体発現)、薬物動態(血清中ガルカネズマブ濃度)等が設定された。このうち、12か月後の1か月あたりの片頭痛日数のベースラインからの平均変化量は、反復性片頭痛のエムガルティ120mg/エムガルティ120mg群(n=58)で1.8日減、プラセボ/エムガルティ120mg群(n=62)で4.3日減だった。慢性片頭痛のエムガルティ120mg群(n=32)では9.4日減だった。


日本頭痛学会代表理事の平田幸一氏(左)と
同顧問の坂井文彦氏(右)(日本イーライリリー提供)

臨床試験結果を発表した埼玉精神神経センター・埼玉国際頭痛センター長の坂井文彦氏(日本頭痛学会顧問)は、エムガルティ群とプラセボ群で片頭痛日数に明確な差が出たとして、「片頭痛の臨床試験で評価するのは患者さんの自覚症状」と客観的な指標がないことを前置きしつつ、「臨床試験で片頭痛のメカニズムにエビデンスを示すことができたとも考えられる。推測だけで見えなかったものが、データとして見えてきた」と評価した。

既存薬との使い分けについて坂井氏は、「エムガルティは半減期が1月と長いので、予防的な使い方がされるだろう」とし、「既存の予防薬や急性期治療薬との併用もありうる」との認識を示した。

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