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ダビガトランがESUS再発予防法として有望、日本人サブグループ解析より-国循ほか

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2020年11月02日 PM12:15

RE-SPECT ESUS試験、日本人患者の治療成績を解析したサブ研究結果を発表

国立循環器病研究センターは10月30日、(Embolic stroke of undetermined source:)に対する抗凝固療法の再発予防効果を検証する国際共同臨床試験「RE-SPECT ESUS試験」において、日本人患者の治療成績を解析したサブ研究結果を発表した。この研究は、同研究センターの豊田一則副院長らの研究グループによるもので、同試験はベーリンガーインゲルハイム社が実施した企業試験。研究成果は、日本循環器学会英文機関誌「Circulation Journal」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

脳梗塞の主な原因として、心房細動などによって心臓にできた血栓が脳の大血管を閉塞させる心原性脳塞栓症や、脳動脈や頚動脈の動脈硬化に因る脳梗塞が挙げられる。一方で、明らかな原因がわからないESUSが脳梗塞患者全体の約2割を占める。ESUSに対する有効な薬物治療法は現在確立しておらず、再発予防にアスピリンなどの抗血小板薬を使用することが一般的だ。

今回、ESUS患者に一定の割合で発作性心房細動が隠れていることなどを根拠に、心房細動患者に頻用される直接作用型経口抗凝固薬()「ダビガトラン」をESUSの再発予防に用いた大型の無作為化比較試験RE-SPECT ESUSが、国際共同で実施された。

同試験ではダビガトラン群とアスピリン群の脳卒中再発率に差を認めず、DOACをESUS患者に推奨するには至らなかった。同試験には日本から、登録患者5,390例の11%にあたる594例が登録された。日本人は診療の細やかさや抗血栓薬への反応性など、脳卒中診療において独自の特色を呈することが多く、事前に予定されたサブ解析として日本人患者での治療成績の検討が組まれていた。

日本人ESUS患者の脳卒中再発率、ダビガトラン群年4.3%、アスピリン群年8.3%

今回、日本人ESUS患者の294例がダビガトラン(300mgないし220mg、分2)を、300例がアスピリン(100mg、分1)を服用するように、無作為に割り付けられた。

試験の結果、主要評価項目である脳卒中再発率は、ダビガトラン群で年4.3%、アスピリン群で年8.3%と有意な差を認めた(ハザード比0.55、95%信頼区間0.32-0.94)。安全性評価項目の大出血は、各々年2.5%、年3.5%と有意差を認めなかった。

一方、日本人以外の患者では脳卒中再発率が各群で年4.1%、年4.3%と差を認めなかった。患者群×治療群間の交互作用は、P=0.09と有意差を示すに至らなかったとしている。

ESUSへのDOAC適否を結論付けるには、新たな研究が必要

同試験からは、日本人患者のみで検討した場合にESUS患者の再発予防法としてダビガトランが有望であることが示された。ダビガトランの効果に人種の違いが生じた主因の一つとして、研究グループは、患者組み入れ時の頭部MRI(99.8%対日本人以外76.8%)、MR血管撮影(92.8%対41.8%)の施行率の違いを挙げた。

ESUSを診断するには頭蓋内主幹動脈病変を正確に除外する必要があるが、そのためにMR血管撮影が最も簡便だ。梗塞の性状もCTよりMRIを用いたほうが、正確な情報を得られる。また、日本の脳卒中治療に携わる医師は、日本脳卒中学会が作成した「植込み型心電図記録計の適応となり得る潜因性脳梗塞患者の診断の手引き」などに基づいてESUSの定義を厳密に考える傾向があるという。これらの点で、日本では心原性塞栓機序がより強く関与したESUS患者を試験に多く組み込むことができ、その結果、ダビガトランの治療効果を顕在化させることができたと考察している。

日本人のESUS患者にダビガトランを含めたDOACが真に有効であれば朗報だとする一方で、今回の結果は、「本体研究で差が出なかった主要評価項目がサブ解析集団できれいな群間差を生じた特殊な状況」であり、ESUS患者へのDOACの適否を結論付けるには新たな研究を加える必要がある、と研究グループは述べている。

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