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大切な人の介護経験が「人生の最期の医療を話し合う」行動と関連-筑波大ほか

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2020年10月13日 AM11:00

介護/死別経験は、「人生の最終段階の医療に対する希望を話し合う」ことと関連するか

筑波大学は10月9日、厚生労働省が実施した「人生の最終段階における医療に関する意識調査」で収集されたデータを解析した結果、大切な人の介護経験は「人生の最終段階の医療に関する話し合い」を行うことと関連することが示されたと発表した。これは、同大医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野/ヘルスサービス開発研究センターの杉山雄大准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Pain and Symptom Management」に掲載されている。


画像はリリースより

高齢多死社会を迎えた日本において、人生の最終段階の医療やケアのニーズが高まっている。あらかじめ「人生の最終段階における医療に関する話し合い」を家族や医療介護提供者としておくと、自身が希望する医療やケアを受けられやすくなるとされている。話し合いを促進するには、促進する要因や障壁となる要因を探索し、把握しておかなければならない。

これまでの研究では、大切な人との死別経験と、人生の最終段階の医療に関する話し合いを行うこととの間に関連があることが示唆されていた。しかし、大切な人を介護した経験と、人生の最終段階の医療に関する話し合いとの関連を探求した研究は、研究チームが調べた限りなかった。そこで、日本の一般市民を対象として、「人生の最終段階に関する話し合い」を行うことと大切な人の介護経験などの要因との関連を明らかにすることにした。

死別経験ではなく介護経験が、話し合う行動と関連

厚生労働省が2017年12月に一般国民を対象として実施した「人生の最終段階における医療に関する意識調査」で収集されたデータを2次利用した横断研究を行った。調査では、全国の20歳以上の男女から無作為抽出で選出された6,000人に調査票が郵送され、973人から回答が得られた。今回の解析では、「人生の最終段階の医療に関する話し合い」の実施の有無、性別、年齢、同居家族、最終学歴、かかりつけ医の有無、大切な人との死別経験および大切な人の介護経験の有無に関する情報を欠いた回答者を除外し、最終的には836人が解析対象となった(有効回答率13.9%)。

解析対象者836人(65歳以上:43.5%、男性割合:55.6%)のうち、人生の最終段階の医療に関して話し合ったことがあるのは346人(41.4%)だった。「人生の最終段階の医療に関して話し合いをしたことがある」との回答と正の関連が認められた要因は、大切な人の介護経験(オッズ比:1.88,95%信頼区間:1.35-2.64)だった。一方、大切な人との死別経験は関連が認められなかった。

また、「人生の最終段階の医療に関して話し合いをしたことがある」との回答に負の関連が認められた要因は、男性(同0.40,0.30-0.55)、年齢(6歳以上と比較して、20-39歳 0.31,0.18-0.53、40-64 歳 0.49,0.34-0.71)であった。

医療介護提供者は、「すでに希望を考えている可能性」を考慮した対応を

以上の結果より、死別経験にかかわらず、大切な人の介護経験は「人生の最終段階の医療に関する話し合い」を行うことと関連することが示された。また、男性や若い人ほど、人生の最終段階の医療に関する話し合いをしていない可能性が示唆された。

医療介護提供者は、過去に介護経験のある個人と人生の最終段階の医療に関する話し合いを始める際には、個人がすでに自身の将来の治療やケアに対する希望を考えていたり、周囲と話し合ったりしている可能性を念頭において話し合いを進める必要がある。また、患者の家族などに対し、介護経験が介護者自身の「人生の最終段階における医療に関する話し合い」に影響する可能性を認識した上で(介護者と思いや負担を共有する、介護に関与していない人には可能な介護に関与できるよう支援するなど)対応を行うことが望ましい。「今後は、特に男性や若い人に対して、人生の最終段階の医療に関する話し合いを行うことを促進する教育が必要であると考えられる」と、研究グループは述べている。

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