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NKT細胞活性化による新規治療法、進行・再発固形がん対象の医師主導治験開始-慶大ら

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2018年03月14日 PM02:30

新規再生医療等製品を用いたNKT細胞標的がん治療

慶應義塾大学は3月12日、理化学研究所の統合生命医科学研究センターの谷口克免疫制御戦略研究グループディレクターらが発見したナチュラルキラーT(NKT)細胞による免疫細胞活性化のメカニズムを応用し、新規に開発した再生医療等製品を用いたNKT細胞標的がん治療の安全性・有効性を評価するための第1相医師主導治験を開始したと発表した。


画像はリリースより

この治験は、同大学病院臨床研究推進センターの副島研造教授、同大学病院輸血・細胞療法センターの田野崎隆二教授らによって行われるもの。使用する治験製品は、理研、株式会社アンビシオン、慶大学医学部との共同研究、および同大学病院臨床研究推進センターの支援により開発され、アンビシオンが製造提供する。また、この治験は、他施設での実施も計画されている。

NKT細胞はヒトに共通で存在する唯一の免疫細胞。また、がんを直接攻撃するのではなく患者のがん免疫機能を活性化する治療法であるため、全てのがん種、あらゆるヒトに治療効果が期待される。なお、同治験製品をヒトに投与するのは、この治験が初めて。

標準治療が無効・確立されていない固形がんを対象に

新規NKT細胞標的がん治療に用いる治験製品は、患者自身の血液から分離した糖脂質抗原提示細胞に、新規糖脂質リガンドをとりこませた細胞。同治験製品は、がん患者の体内でNKT細胞を刺激し、NKT細胞の作用により自然免疫系を司るNK細胞の活性化、未熟樹状細胞の分化促進、獲得免疫系を司る細胞傷害性T細胞(CTL)の活性化、CD4ヘルパーT細胞やγδT細胞などのがん免疫反応に関わるさまざまな免疫細胞の活性化を同時に引き起こすという。また、動物実験の結果から、1度の投与で約1年にわたる長期免疫記憶を誘導し、この期間、常にがん細胞を攻撃することが確認され、持続的な強い抗腫瘍効果が期待されるとしている。

この治験製品の特性として、全てのがん種に抗腫瘍効果が期待できることから、同治験においては特にがん種を特定せず、標準治療が無効または標準治療が確立されていない20歳以上75歳未満の進行・再発固形がんの患者を対象とする。同治験では、1度目の同意により仮登録をし、患者自身から成分採血を実施することで得られた細胞を用い、患者の体表面積に合わせた投与細胞数が含まれる治験製品を製造。2度目の同意により本登録を行い、製造された製品を4週間隔で2回、点滴で静脈内に投与する。

なお、この治験はFIH(First In Human)試験であることから、各回投与後約1週間の入院で、慎重に投与後の観察を実施する。主要評価項目は、初回投与から観察期間終了時までの用量制限毒性の発現する割合。

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