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九州大 加齢血管における血管拡張作用の減弱機構を明らかに

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2014年02月21日 PM07:50

九州大学大学院研究グループが解明

九州大学大学院農学研究院の松井利郎教授ら研究グループが、加齢血管において薬剤などによる血管拡張作用が減弱するメカニズムを解明することに成功した。2月13日、同大学より発表されている。この研究成果は、米科学誌の「PLOS ONE」オンライン版に、2月12日付で掲載された。

松井教授らの研究グループは、これまでにアミノ酸が2つあるいは3つ結合された低分子ペプチドを摂取すると、血圧の値が改善されることをヒト試験において明らかにしていた。研究を通して開発された素材は、特定保健用食品としての認可も受けている。しかし、高齢者での摂取を前提とした、加齢血管における血管拡張作用については、十分に明らかとなっていなかったという。そこで今回は、若齢ラットと高齢ラットを用いた比較実験により、その血管拡張作用をさらに検討している。

(画像はプレスリリースより)

高齢ラットでは血管伸縮を担うカルシウムチャンネル量が顕著に低下、薬剤による作用も大幅に減弱

研究グループは、過去に低分子ペプチドのうち、ジペプチド(トリプトファン-ヒスチジン)を1kgあたり100mg、3か月間マウスに投与すると、大動脈の病変形成が抑えられ、動脈硬化の進行を予防することを初めて突き止めていた。また、このジペプチドは、血管平滑筋にあるL型カルシウムチャンネルに結合するカルシウムチャンネルブロッカーであることも明らかにしていた。

こうした知見をもとに、若齢ラットと高齢ラットの大動脈血管を比較したところ、血管の伸縮に関わるカルシウムチャンネル量が高齢ラットにおいては顕著に低下していることを発見した。降圧剤のひとつであるカルシウムチャンネル阻害剤のベラパミルによる血管拡張作用も、高齢ラットの加齢血管においては、その効果が大幅に低下することが確認されている。これは、先のカルシウムチャンネル量の減少に由来すると考えられる。

このことから、同様にカルシウムチャンネルを阻害することで血管拡張作用を示すジペプチドでも、血圧降下作用といった効果が現れなくなる可能性があると判断され、実際に高齢ラットで確認したところ、ジペプチドの血管拡張作用が完全に消失していたという。

カルシウムチャンネルブロックで血管拡張作用はあり、ただしより重要なのは血管伸縮性の維持か

カルシウムチャンネルを阻害する作用をもつ薬剤やペプチドにより、血管拡張作用が得られること、動脈硬化や高血圧を防ぐことが可能であることは、これまでの研究結果からも強く示唆される。

しかし、今回新たに得られた知見では、血管機能が衰え、伸縮性が低下した加齢血管では、対象となるカルシウムチャンネル量が大きく減少しているため、その作用発現が不十分となることが明らかとなった。

そのため研究グループでは、若い世代からの血管伸縮性の維持がより重要であるほか、今後の研究においては、加齢血管においても血管拡張作用を示す成分を新たに見出すことが求められるとしている。(紫音 裕)

▼外部リンク

九州大学 プレスリリース
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2014/

Attenuation of L-Type Ca2+ Channel Expression and Vasomotor Response in the Aorta with Age in Both Wistar-Kyoto and Spontaneously Hypertensive Rats
http://www.plosone.org/article/0088975

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