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パーキンソン病、体重減少に伴う特徴的な代謝シフトを発見-藤田医科大

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2025年12月22日 AM09:00

パーキンソン病に見られる代謝異常、体重との関連は十分に解明されていなかった

藤田医科大学は12月2日、パーキンソン病における体重減少の原因を解明するため、エネルギー代謝異常に着目し、患者の体組成と血中代謝物のデータを多面的に解析した研究結果を発表した。この研究は、同大脳神経内科学の水谷泰彰准教授、東篤宏助教(現神戸大学)、渡辺宏久教授、内分泌・代謝・糖尿病内科学の鈴木敦詞教授、清野祐介准教授、医用データ科学の吉本潤一郎教授、オープンファシリティセンターの前田康博准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
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パーキンソン病では、体重減少が高頻度に見られるが、その背景にある体組成の変化やエネルギー代謝の異常については、十分に解明されていない。これまでの研究では、パーキンソン病におけるミトコンドリアの機能低下や糖代謝の異常が報告されており、全身のエネルギー利用が影響を受ける可能性が示されている。しかし、こうした代謝異常が体重減少とどのように関連するのかは明らかではなかった。

そこで今回の研究では、パーキンソン病患者の体組成と血液中の代謝物を包括的に解析し、体重減少の背景にあるエネルギー代謝の特徴を明らかにすることを目的とした。

患者91人を解析、体脂肪量のみが選択的に減少と判明

研究では、同大病院に通院するパーキンソン病の患者91人と健常対照者47人を対象として、体組成と血液中のエネルギー代謝に関連する物質を包括的に解析した。

まず、体組成について、生体電気インピーダンス法による体組成測定を行い、身長、体重、ボディマス指数(BMI)、体脂肪量、筋肉量などを評価した。その結果、パーキンソン病の患者では体重およびBMIの低下が見られ、筋肉量は健常者と同程度に保たれている一方で、体脂肪量のみが選択的に減少していた。これは、パーキンソン病における体重減少が、脂肪組織の減少によって引き起こされる特徴的な変化であることを示している。

患者の血中代謝物を解析、糖代謝の低下+脂質代謝の亢進を発見

次に、質量分析を用いて、血液中の解糖系およびクエン酸回路(TCAサイクル)に関連する代謝物、脂質やアミノ酸代謝に由来する代謝物など、計17種類の代謝物を測定した。その結果、パーキンソン病の患者で、糖代謝の低下を反映する乳酸および乳酸/ピルビン酸比の低下、TCAサイクルの低下を反映するコハク酸の低下を確認した。また、ケトン体(アセト酢酸や3-ヒドロキシ酪酸)およびアミノ酸代謝に関連する物質が上昇していた。

これらの結果から、パーキンソン病では、通常とは異なり、糖を利用したエネルギー産生が低下し、脂質やアミノ酸を代替エネルギー源として積極的に利用する代償的なエネルギーシフトが生じていることが示唆された。さらに、BMIが低い(=やせた状態の)患者ほど、ケトン体の増加が顕著であり、糖代謝の低下と脂質代謝の亢進という代謝異常がより強く認められた。このことは、体重減少が進むにつれて、体脂肪の消費が加速し、糖から脂質への代償的なエネルギー利用シフトがさらに強まることを示している。

代謝経路を標的とする食事療法や新しい治療法の開発に期待

今回の解析結果から、パーキンソン病の患者で起こる体重減少の背景に、糖代謝の低下と脂質およびアミノ酸代謝の亢進が同時に生じる特徴的なエネルギー代謝異常が存在することが示された。このことから、パーキンソン病に関連した代謝変化が体重減少に寄与している可能性が考えられた。

同研究で明らかになった代謝の偏りは、パーキンソン病における早期の代謝異常を捉える指標となる可能性がある。「今後は、これらの代謝変化が血液だけではなく、脳においても起こっているかを検証する必要がある。また、エネルギー代謝を是正する食事療法が、体重減少の抑制や患者の健康維持に役立つ可能性がある。今回解明した代謝経路を標的とする治療や介入の開発につながることも期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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