肥満とフレイルの関係性、従来の認識とは異なる可能性が示されていた
大阪公立大学は12月10日、フレイル進行と腹部肥満の関係を分析し、その結果を発表した。この研究は、同大研究推進機構都市健康・スポーツ研究センターの横山久代教授によるもの。研究成果は、「Geriatrics」にオンライン掲載されている。
大阪府の要介護認定率は全国で最も高い水準で、高齢になっても元気で過ごせる「健康寿命」を伸ばすことが重要な社会課題となっている。特に「フレイル」と呼ばれる、心身の衰えが進む前段階の状態を早く見つけて、進行を防ぐことが大切だ。
肥満はフレイルと対極のイメージとして捉えられがちだが、大阪府民から得たデータを分析する中で、フレイルに該当する人は標準体重を上にも下にも外れる人が多いことがわかっていた。もし、腹部肥満のある人がフレイルになりやすいとみなすことができれば、彼らに焦点をあてたフレイル予防戦略が有効となる。そこで、腹部肥満がフレイル進行に及ぼす影響について明らかにすることを目的として研究を行った。
健康サポートアプリ利用者2,962人対象、2年連続のアンケート分析
研究では、府民の健康をサポートするために大阪府で運営しているスマートフォンのアプリ「アスマイル」の利用者で、2023年2月および2024年2月に実施した同内容のWebアンケートに、2年連続で回答した30~79歳の人のうち、腹囲のデータが得られた計2,962人(男性1,250人、女性1,712人、平均年齢63歳)の回答結果を分析した。
アンケートは、要介護状態となるおそれが強い高齢者を把握するために厚生労働省が作成した「基本チェックリスト」の25項目に加え、運動習慣の有無やフレイルについての認識の程度を尋ねた。また、これまでの報告に基づき「基本チェックリスト」の7項目以上に該当する者をフレイルとした。
23%が腹部肥満に該当、腹部肥満のない人に比べフレイルに該当する人の割合「大」
分析の結果、2023年のデータでは、全体の23%が腹部肥満に該当し、腹部肥満のない人に比べ、フレイルに該当する人の割合が大きいことが判明した。また、さまざまな条件を調整せずに行った単純解析では、2023年にフレイルに該当しなかった2,431人のうち、腹部肥満の人の方が、腹部肥満のない人に比べて、翌年に新たにフレイルになった人の割合が大きくなった。
フレイルの知識を持ち定期的な運動の実施で、腹部肥満者のフレイルリスク減の可能性
しかし、ロジスティック回帰分析の結果、腹部肥満はフレイル進行に直接的に関係しているとは言えなかった。さらに、運動習慣があり、フレイルの認知度が高いほどフレイルが進行しにくいことがわかった。つまり腹部肥満の人でも、フレイルについての知識を持ち、定期的な運動を行うことでフレイルになるリスクを減らせる可能性がある。
保健指導や地域の健康づくりの活動を通し、フレイルの知識獲得や行動を促す取り組みを
今回の研究成果により、体重管理やおなか周りの脂肪を減らすことだけでなく、フレイルについて知ることや日常生活の中で運動を続けることが、フレイル予防に非常に大切であることが明らかにされた。
「今後は保健指導や地域の健康づくり活動の中で、腹部肥満のある人にフレイルを自分事と捉えてもらい、知識や行動を促す取り組みを広げていきたいと考えている」と、横山教授は述べている。
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・大阪公立大学 プレスリリース


