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スマホゲームの依存対策、数秒の待ち時間と視覚刺激の低減が有効-九大

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2025年12月16日 AM09:30

若年層のゲーム依存、OS・外部アプリに頼る対策に限界があった

九州大学は11月28日、スマホゲームの遊びすぎ防止効果を世界8万人規模の実データで初めて大規模に検証したと発表した。この研究は、同大大学院システム情報科学研究院の中村優吾助教、高尾亮太氏、福嶋政期准教授、荒川豊教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies」に掲載されている。


画像はリリースより
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スマートフォンゲームは世界中で広く利用されているが、長時間プレイによる健康影響や、若年層を中心としたゲーム依存が社会的な課題として指摘されている。これまでの対策は、OSのスクリーンタイム機能や外部アプリによる利用制限など、ユーザー側に依存した仕組みが中心であった。しかし、これらの手法はゲーム内の体験設計と切り離されているため、十分に機能しないケースがある。

一方、日常生活では、電車で電波が悪くなると自然にスマホ利用をやめるなど、“ちょっとした不便さ”がユーザーの行動をやさしく調整する場面が見られる。今回の研究は、こうした現象を意図的にゲームデザインへ応用することで、強制ではなく自然に、遊びすぎ防止が実現できるのではないかという着想のもとで行われた。

ロード遅延とモノクロ化でプレイ時間最大30.8%、継続率40.4%低下

研究グループは、世界的に人気のスマートフォンゲーム「Flying Gorilla」を用い、8万4,325人のユーザーを対象に、ロード時間の延長と画面のグレースケール化(モノクロ化)という2種類のデザイン介入をランダムに適用する1か月間の大規模実験を実施した。

その結果、ロード時間を10秒に延ばすことで平均プレイ時間が14.3%減少した。また、画面をグレースケール化するだけで平均プレイ時間が22.8%減少した。さらに、グレースケール化+10秒待ちを組み合わせると、プレイ時間が最大30.8%、継続率が40.4%低下した。

これらの結果は、ゲームに小さなデザイン変更を加えるだけで、強制せずとも自然に利用時間を調整できることを定量的に示した初めての知見である。また、ユーザー体験を大きく損なわずに、遊びすぎに対して”さりげないブレーキ”を埋め込める可能性を明らかにした。

ゲーム内蔵型「やさしいブレーキ」の実現へ、スマホアプリ全般への応用に期待

今回の成果は、ゲーム依存という世界的な健康課題に対する予防策として有効であるだけでなく、スマホアプリ全般における「使いすぎを抑えるデザイン」への応用も期待できる。強制的な制限ではなく、アプリ側に“やさしいブレーキ”をあらかじめ組み込むことで、ユーザーが無理なく健康的な利用習慣を維持できる仕組みの実現につながると期待される。

「今後は、開発者、利用者、プラットフォーマー、医療現場の専門家など、多様な関係者と力を合わせながら、他ジャンルのゲームでの効果検証、個々のプレイ状況に応じて介入を調整する「適応型デザイン」の検討、子ども・高齢者など対象層に応じた設計指針の策定、アプリ側に自然な“やめどき”をつくる倫理的デザインの確立といった展開が期待される。ユーザーの自律性を尊重しながら健全なデジタル利用を支える“やさしい介入デザイン”の実現に向け、今後も研究を進めていく」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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