血液検査による脂肪肝の評価、糖尿病患者では精度に課題
大阪大学は9月22日、糖尿病における脂肪肝とミリスチン酸の関連性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の細江重郎氏(研究当時:博士課程)、片上直人講師、下村伊一郎教授(内分泌・代謝内科)、九州大学生体防御医学研究所附属高深度オミクスサイエンスセンターの馬場健史教授(メタボロミクス分野)らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Diabetes」にオンライン掲載されている。

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糖尿病は、さまざまな合併症を引き起こすが、その中でも特に多いのが脂肪肝である。脂肪肝は病状の進行度に伴い肝臓にさまざまな脂質が蓄積するが、その正確な評価には肝生検が必要になる。その代替手段としては、通常画像検査が用いられるが、近年では、血液中の脂質プロフィールを網羅的に解析する手法も注目を集めている。
しかし、この血液中の脂質プロフィールを用いた脂肪肝の評価は、糖尿病患者では大きく精度が低下することが知られている。その一因として、糖尿病患者における脂肪肝合併時の血中脂質プロフィールが十分解明されていないことが挙げられる。また、これまでの血液中の脂質プロフィールを解析する方法には、さまざまな技術的な課題があり、一部の脂質の解析に留まるものや、脂質の構成成分に関しては解析できないものがほとんどだった。
糖尿病患者の血中脂質、新規測定法で構成成分の違いを含め網羅的に解析
今回の研究では、九州大学が開発した各脂質の構成脂肪酸の組み合わせまで明らかにできる新しい測定法(超臨界流体クロマトグラフィー)を用いた。同法を用いて、大阪大学医学部附属病院に通院中の糖尿病患者の血液中に含まれる約350種類の脂質を網羅的に構成成分の違いまで詳細に測定した。さらに、脂肪肝の合併の有無によって、どのような血液中の脂質プロフィールの違いが認められるかを評価した。
糖尿病+脂肪肝ではミリスチン酸含有の中性脂肪が増加、入院治療により減少
その結果、脂肪肝を認める糖尿病患者の血液中の脂質プロフィールは、脂肪肝のない患者と大きく異なることが明らかになった。脂肪肝のある糖尿病患者では、特に中性脂肪、とりわけ構成成分としてミリスチン酸(FA 14:0)を含む中性脂肪が増加していた。
中性脂肪を構成する成分に着目し、これらが糖尿病の入院治療を行った前後でどのように変化するか、また脂肪肝の合併の有無で影響が異なるかを調べた。脂肪肝のない患者では、治療により中性脂肪の構成脂肪酸の多くが減少傾向を示したものの、統計学的に有意な変化は見られなかった。一方、脂肪肝のある患者では、中性脂肪の構成脂肪酸の多くが減少し、その中でもミリスチン酸が最も大きく減少することが判明した。
脂肪肝の病態解明や新たな治療法につながる可能性
今回の研究によって、糖尿病に脂肪肝を合併した際の血中脂質プロフィールの変化の詳細が初めて明らかになった。また、この成果により、血液中の中性脂肪を構成するミリスチン酸が脂肪肝における病態を反映するバイオマーカーや治療標的になる可能性が示された。
「本研究が糖尿病に合併する脂肪肝の病態解明の一助となることが期待される」と、研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU


