医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 高齢者のうつ症状と便秘症状が関連することを国際的評価スケールで明らかに-順大

高齢者のうつ症状と便秘症状が関連することを国際的評価スケールで明らかに-順大

読了時間:約 2分25秒
2025年07月31日 AM09:20

予防対策が重要な高齢者のうつと便秘、詳細に関連性を検討した報告はなかった

順天堂大学は7月7日、984人の高齢者を対象とし国際的に広く用いられている評価スケールである「老年期うつ病評価尺度(Geriatric depression scale 15:GDS15)・便秘症状重症度(constipation scoring system:CSS)・消化器症状関連QOL問診票(国際的に広く利用されている消化器症状関連QOL問診票である出雲スケール)を用いて、うつ症状の重症度と上~下腹部症状のQOLの低下、便秘重症度が関連し、高齢者のうつ症状が便秘症状と関連していることを日本で初めて報告したと発表した。この研究は、同大医学部附属 順天堂東京江東高齢者医療センター 消化器内科の喜古博之助手、浅岡大介教授、同・呼吸器内科の菅野康二准教授、松野圭准教授、同・整形外科の宮内克己特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Diagnostics」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

世界でも有数の超高齢社会の日本では、2024年には高齢者人口は総人口の29.3%を占めている。うつ症状を含む気分障害は高齢者で多く、うつ症状は生活の質(QOL)を低下させ、食欲低下などを生じ生命予後にも影響を及ぼすことが報告されている。一方、便秘症状は若年層では女性が多いが、60歳代以降は男性も急増し、70歳以上になると男女比がほぼ1:1となり、高齢者に多く認める疾患だ。高齢者の便秘症状も、うつ症状と同様にQOLを低下させ、近年では便秘は冠動脈疾患・脳血管疾患・慢性腎疾患・フレイル・サルコペニアと関連し寿命を縮めるとも報告されており、うつ症状・便秘症状はともに予防対策が重要だ。しかし、高齢者のうつ症状と便秘症状との関連について国際的に広く用いられている症状アンケートを用いて詳細に検討した報告はない。

そこで研究グループは今回、高齢者専門大学病院における大規模前向きコホート研究(JUSTICE研究)の登録時データを用いた横断研究において、高齢者のうつ症状と便秘症状との関連を検討することを目的とした。

高齢者984人のうち、軽度もしくは中等~重症度のうつ状態は38.7%

今回の研究は、同センター内科外来を受診した65才以上の高齢者で自立歩行可能(杖歩行含む)な男性427例、女性557例の計984人(平均年齢78.1±6.1歳、平均BMI 22.9±3.7)を対象とした横断研究(高齢者専門大学病院における多職種によるフレイル実態調査の大規模前向きコホート研究(JUSTICE研究)の登録時データを使用)。

調査項目は(1)患者背景問診:年齢、性別、BMI(身長、体重)、飲酒(0: None or social、1: 1-4 days /week、2: 5-7 days / week)、喫煙(Brinkman Index:本数×年数)、(2)内服薬:スタチン、酸分泌抑制薬、下剤、(3)腹部症状質問票:出雲スケール、CSS、(4)心理検査:認知機能関連問診(Mini-Mental State Examination:MMSE)、GDS15とした。これらをGDS15スコア、各種調査項目における相関、ならびに多変量解析(重回帰分析)によるリスク因子の解析で評価。GDS15スコアが0~4点は正常、5~9点は軽度うつ状態、10~15点は中等~重度うつ状態とした。

その結果、全高齢者(984人)のうち、GDS15スコアが正常は603人(61.3%)、軽度うつ状態は319人(32.4%)、中等~重度うつ状態は62人(6.3%)で、軽度もしくは中等~重症度のうつ状態の高齢者は38.7%だった。

うつ症状の重症度と消化器症状QOLの低下・便秘重症度が関連

GDS15(うつ症状)重症度別にみた各種腹部症状スコアの比較では、うつ症状の重症度と消化器症状QOLの低下(数値が高いとQOLが低下)・便秘重症度(数値が高いと重症)が関連していた(p<0.0001)。また、GDS15(うつ症状)スコアは、全ての上~下腹部症状(逆流・胃痛・胃もたれ・便秘・下痢)のQOLの低下や便秘重症度と相関しており、便秘QOLスコアが最も相関係数が高かった。

うつの強さと比例して、便秘重症・逆流/下痢悪化・やせ・認知機能低下

さらに、高齢者ではうつ症状の強さに比例して、便秘症状は重症だった(便秘重症度(CSS)・便秘QOL)。また、うつ症状の強さに比例して、逆流・下痢の症状も悪化しており(逆流QOL・下痢QOL)、やせ(BMI)や、認知機能低下(MMSE)とも関連していた(多変量解析)。

高齢者の健康寿命延伸を目指し、便秘やうつ症状予防などの臨床研究を推進

順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターは、超高齢社会・人生100年時代において、健康寿命延伸対策として、フレイル・サルコペニア・認知症・骨粗しょう症診療をトータルマネージメントする「長寿いきいきサポート外来」や「便秘外来」を開設し、高齢者の健康長寿に積極的にかかわり、予防対策に努めているという。

「今後、本研究での知見をもとに、高齢者の健康寿命延伸を目標に、便秘やうつ症状に対して予防・介入を含めた臨床研究を精力的にすすめていきたいと考えている」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 重症心不全の回復予測因子を同定、IDH2/POSTN比が新たな指標に-東大ほか
  • 急変する環境での集団意思決定パフォーマンスを改善する仕組みを解明-東大ほか
  • コーヒーと腎機能の関係、遺伝的多型が影響の可能性-徳島大ほか
  • リンチ症候群、日本人の病的バリアント大規模解析で臨床的特徴が判明-理研ほか
  • 変形性膝関節症の高齢者、身体回転のイメージ形成が困難に-大阪公立大