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SGA性低身長症、遺伝要因の正確な影響を明らかに-成育医療センター

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2022年06月23日 AM10:18

原因不明SGA性低身長症症例を集積、包括的遺伝子解析を実施

国立成育医療研究センターは6月22日、SGA性低身長症における遺伝要因の正確な影響を明らかにしたと発表した。この研究は、同研究センター分子内分泌研究部の原香織研究員、中村明枝研究員、鏡雅代室長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

SGA性低身長症は、小さく生まれたことによって生じる低身長症。在胎週数に比して身長および体重が小さく出生した児(small for gestational age:SGA)が、2歳までに成長が追いつかない場合、SGA性低身長症と定義され、成人の低身長の原因の約20%を占める。身長の改善を目指して成長ホルモン治療が行われるが、その反応には個人差が大きい。また、環境因子、母体因子、胎児因子など複合的な要因によって生じるため、その多くが原因不明のまま治療を開始されている。

SGA性低身長症の遺伝要因は、インプリンティング疾患、病的なコピー数異常、成長に関連する遺伝子の変異など、多岐に渡る。しかし、これらの要因を包括的に検討した報告は非常に少なく、症例数も限られていた。研究グループは、原因不明のSGA性低身長症症例を集積し、メチル化解析、コピー数解析、次世代シーケンシングを組み合わせた包括的遺伝子解析を実施。今回の研究は、原因不明のSGA性低身長症における遺伝要因の影響を明らかにすることを目的とした。

原因不明SGA性低身長症140例、46%の原因を特定

今回の研究は原因不明のSGA性低身長症に対して包括的な遺伝子解析を実施したこれまでで世界最大規模の研究。原因不明のSGA性低身長症140例に対し、包括的な遺伝子解析を実施し、65例(46%)の原因を特定した。その内訳は、インプリンティング疾患46例、病的なコピー数異常8例、成長に関連する遺伝子の病的変異11例だった。インプリンティング疾患は、父あるいは母由来からのみ発現するインプリンティング遺伝子の発現異常によって生じる疾患で、SGA性低身長症を伴う代表的なものにシルバーラッセル症候群がある。

遺伝要因別、成長ホルモン治療に対する反応性など予測できる可能性

研究グループは、今回の研究により、SGA性低身長症の原因精査における包括的遺伝子解析の臨床的意義を証明することができたとしている。すなわち、SGA性低身長症の遺伝要因を明らかにすることで、遺伝要因別の成長ホルモン治療に対する反応性や将来的に起こり得る合併症を予測できる可能性が示された。今後、SGA性低身長症の原因が明らかにされることで、患者にとってより良い医学的管理が可能になるだけでなく、新たな疾患概念の確立にもつながる可能性がある、と研究グループは述べている。

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