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MCH神経に脱力発作の持続時間抑制作用、ナルコレプシーでの脱力発作メカニズム解明に期待-名大

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2020年04月24日 PM12:15

・MCH神経両脱落マウスを作成、睡眠覚醒調節や脱力発作発現頻度の影響を解析

名古屋大学は4月22日、メラニン凝集ホルモン(MCH)神経にはオレキシン神経と機能連関して脱力発作の持続時間を短縮させる働きがあることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大環境医学研究所の山中章弘教授らの研究グループによるもの。研究成果は、英国科学誌「eLife」のオンライン版に掲載されている。

睡眠覚醒を調節する神経回路の動作についてはあまり明らかになっていないが、近年、本能行動を司る視床下部に存在するオレキシンを産生する神経(オレキシン神経)が、覚醒維持に極めて重要な役割を担っていることがわかってきた。オレキシン神経が、特異的に脱落すると、覚醒を維持できずにどこでも眠ってしまう「」を発症する。ナルコレプシーでは、笑った時などに抗重力筋の脱力によって姿勢が保てなくなる情動脱力発作を示すことが知られている。これらの症状は、オレキシン神経が笑った時などに脱力発作を防いでいることを示しているが、そのメカニズムはよくわかっていない。また、視床下部には、オレキシン神経だけでなくMCH神経が存在しており、オレキシン神経と機能連関して睡眠覚醒調節を行っていると考えられているが、どのように機能連関しているのかについては明らかになっていなかった。

そこで、今回の研究では、オレキシン神経とMCH神経の両方を同時に脳から脱落させたオレキシン、MCH神経両脱落マウスを新たに作成し、睡眠覚醒調節や脱力発作の発現頻度における影響について詳しく解析した。


画像はリリースより

デルタ波とシータ波が優勢な新しい睡眠発作を起こすことを発見

オレキシン神経とMCH神経を両方とも脱落させたマウスは、覚醒時に短い睡眠発作を頻回に起こした。この睡眠発作時のマウスの脳波は、(1-5Hz)とシータ波(6-10Hz)の周波数成分が高くなっており、デルタ波成分が多いノンレム睡眠や、シータ波成分が多いレム睡眠と異なる新しい睡眠状態であることが判明した。研究グループは、この新しい脳状態を「DT睡眠」と命名した。

DT睡眠は、約15秒程度持続し、最大では1日に約180回発作が観察された。脱力発作中には、筆などでくすぐっても脱力発作から回復することはあまりなかったが、DT睡眠中は筆などでくすぐろうとすると、すぐに覚醒に戻ったことから、DT睡眠と脱力発作は異なることが判明。また、DT睡眠は脱力発作を防ぐ薬物では抑制されなかったことから、脱力発作とも異なるメカニズムで生じていることがわかった。

脱力発作の持続時間は、オレキシン神経が脱落したナルコレプシーモデルマウスと比較して明らかに増えていたため、MCH神経は、オレキシン神経と機能連関して脱力発作の持続時間を短くする役割があることが明らかになったという。

今後は、オレキシン神経とMCH神経がどのように機能連関しているのかについて詳細を明らかにすることで、脱力発作のメカニズム解明が進むと予想される。また、オレキシン神経とMCH神経が同時に脱落している過眠症の例が認められることから、これらの過眠症のメカニズムについても理解が進むと考えられる、と研究グループは述べている。

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