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【腎臓病薬物療法学会】薬剤関連腎障害の入院減-「真の医薬分業」実施で成果

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2018年10月24日 AM10:30


■藤枝市でCKDシール貼付

静岡県藤枝市で慢性腎臓病()の重症化を予防するため、市立総合病院、医師会、薬剤師会、行政が一体的に地域ネットワーク「守れ腎臓!ふじえだCKDネット」を構築し、腎機能が低い患者のお薬手帳カバーにシールを貼る注意喚起の取り組みを進めた結果、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬関連腎障害による入院が減少したことが、20日に浜松市内で開かれた日本腎臓病薬物療法学会学術集会で、藤枝薬剤師会の曽根庸介氏から報告された。薬局薬剤師がCKDネットに参加することで、医師への服薬情報等提供料の増加や処方の適正化といった変化がみられ、曽根氏は「真の医薬分業が実施された」成果であることを強調した。

CKDネットの活動は、藤枝市、藤枝市と焼津市の一部から構成される志太医師会、藤枝市立総合病院、藤枝薬剤師会が協働し、2016年3月にスタート。特定健診の受診者、病院退院時や通院時に腎機能を示す値のeGFR(推算糸球体ろ過量)が低い人に対しお薬手帳のカバーにシール「Check!CKDシール」を貼ることで、医療機関や薬局での適切な薬の処方や診察指導時に注意を促す目印とした。

CKDネットでは、まず対策を充実させるため、CKD診療への薬剤師としての関わりなどを盛り込んだマニュアルを作成。これをもとに、シールを市立総合病院薬剤部、市内の薬局、市保健センターで貼付。70歳未満でeGFRが30以上50未満、70歳以上でeGFRが30以上40未満の人には「緑」色のシール、腎機能が極めて低いeGFR30未満の人には「紫」色のシールを貼り、地域でCKD情報を共有する取り組みを開始した。今年、日本腎臓学会のCKD診療ガイドが改訂されたことから、緑色シールの基準である年齢を65歳に変更。65歳以上でも、eGFR45未満の人については、腎臓専門医、専門医療機関に受診を推奨することにした。

特にCKDネットでは、薬局薬剤師がシールを通じて、病院の腎臓内科専門医、管理栄養士、薬剤師や医師会の診療連携医への情報提供に関与しているのが特徴となっている。

これまで取り組んできた薬剤師会のシールの貼付実績は、今年7月までの累計で緑色シールが880枚で推定対象者(2000人)の44%、紫色のシールが426枚で推定対象者(500人)の85%に達し、曽根氏は「紫色のシールについては、ほぼ対象者を網羅した」と報告した。

市立総合病院の入院患者の持参薬とeGFRの変化をみたところ、CKDネット開始2年後の17年には、腎障害リスクのあるRAS阻害薬、NSAIDSの使用が減少し、アセトアミノフェンが増加。eGFRも60未満、30未満の患者が共に減少した。

曽根氏は、市立総合病院に入院する患者の持参薬が腎障害リスクの低い薬剤に変更され、RAS阻害薬関連腎障害による入院が減少したこと、入院時に腎機能が低い患者やCKDの市民も減少したことなど、CKDネット開始後の成果を紹介。その上で、医師と薬剤師についても、健診結果のeGFRを説明する機会が増え、患者の認識が高まったほか、薬剤師から医師への服薬情報等提供料が増加したこと、マニュアルを指針として整形外科医が初回時からNSAIDSの1日最高用量を処方しない事例が増えるなど、処方の適正化が進んだ。これらは「真の医薬分業を実施した」結果であることを強調した。

曽根氏は、CKDネットの精度を高めるため、「多職種と腹の見える関係づくりと情報の共有化、お薬手帳の1冊化による患者データの一元化を継続していきたい」と意欲を語った。

 

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