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高齢者の介護費の地域差は最大4倍、2019年度公的統計データ解析で-筑波大ほか

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2022年10月04日 AM10:29

自治体間の介護費の地域差とその要因を調査

筑波大学は9月30日、2019年度の「」と「」のデータを用い、自治体(市区町村)における高齢者1人当たりの年間介護費の地域差を把握し、その差を説明できる要因を解析、その結果をまとめて発表した。この研究は、同大医学医療系/ヘルスサービス開発研究センターの田宮菜奈子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMC Public Health」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本の介護保険制度は、2000年に導入されてから約20年が経過。利用者本位の介護サービスを、所得によらず公平かつ効率的に提供するために構築された。基本的に介護費の1割を利用者が負担し、残りは介護保険料と公費(税金)で半分ずつ賄われている。公費の4分の1は市区町村が負担しており、地域のニーズによって自治体の財政にかかる負担は異なる。以前から自治体間の介護費の地域差は指摘されていたが、より最近のデータで地域差の程度を把握することが重要だ。また、その地域差に関連する要因について、これまで十分な検討は行われていなかった。

研究グループは今回、一般公開されている2019年度の「介護保険事業状況報告」と「社会・人口統計体系」のデータを用いて、自治体(市区町村)別の高齢者1人当たりの年間介護費の地域差の現状を把握し、さらに地域差を説明できる要因を明らかにすることを目的に研究を行った。

年間介護費は1人約13万円〜55万円と大きな地域差

自治体別の高齢者1人当たりの年間介護費は、その自治体の介護費総額を65歳以上の高齢者の数で割って算出。さらに、地域差を説明し得る要因として、上述の公開データの中から、需要(demand)に関する項目(自治体の年齢構成、性別構成、要介護度の内訳、要介護認定率)、供給(supply)に関する項目(自治体の介護施設ベッド数、介護従事者数、要介護認定者の中のサービス利用者割合)、構造(structure)に関する項目(財政力指数および失業率)を選出した。多変量線形回帰分析によるShapleyアプロ―チと呼ばれる手法を用いて、各項目の地域差(分散)が介護費の地域差(分散)を説明できる割合(Shapley %R2)を計算した。

小規模(人口が2,000人未満)の自治体や複数の市町村が集まった「連合(union)」を除き、最終的に解析に含まれた1,460自治体において、1人当たりの年間介護費は、約13万円〜55万円(最大/最小比4.1倍)であり、大きな地域差があることが明らかになった。自治体ごとの年齢・性別の分布を統計学的に調整しても、最大/最小比は3.6倍であり、年齢・性別だけでは説明できない大きな地域差があると考えられた。

地域差の要因として「要介護認定率」「重度要介護者の割合の高さ」

一方、多変量線形回帰分析の結果、上述の選択項目により自治体間の介護費の分散の84%を説明することができた。特に、需要要因の説明力が著しく高く(Shapley %R2の合計値85.7%)、中でも自治体における要介護認定率(Shapley %R2 22.8%)および重度(要介護度3〜5)の要介護者の割合の高さ(Shapley %R2 32.7%)が、介護費の地域差の多くを説明できることが明らかになった。

研究では、一般公開されている最新の公的統計データを用い、高齢者1人当たりの介護費には(年齢・性別を統計学的に調整しても)大きな地域差があることが確認された。さらに、その大部分を需要要因(特に、自治体の要介護認定率および重度要介護者の割合の高さ)が説明できることも明らかになった。研究結果を基に、介護費の高い自治体において、介護予防などの対策を進めて要介護認定率や重度要介護者の割合などの指標を改善することにより、最終的に介護費を下げることができるかを検証していくことが望まれる。

介護統計を確認できる無料アプリ「」を公開

論文発表と並行し、同大ヘルスサービス開発研究センターは、各市区町村の住民や行政担当者が介護に関する統計をすぐに確認できる無料アプリ「あなたの街の介護が見える」を開発し、公開した。今回の研究にあたって収集・整理した一般公開情報を用いたもので、筑波大学発ベンチャーである輝日株式会社の協力を得ている。「自治体の介護の実態を把握し、介護負担を減らすための議論のきっかけとなることを期待している」と、研究グループは述べている。

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