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皮膚の生体リズムが抗菌免疫を制御する仕組みを解明-京大ほか

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2022年06月20日 AM10:30

皮膚におけるCXCL14の役割解明を目指して

京都大学は6月16日、皮膚の生体リズムが抗菌免疫を制御する仕組みについて解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の辻花光次郎博士課程学生、岡村均同研究員(京都大学名誉教授)と東京都医学総合研究所の種子島幸祐主席研究員、原孝彦同プロジェクトリーダー(幹細胞プロジェクト)らの研究グループによるもの。研究成果は、「PNAS」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

皮膚は環境から個体を守る最外層の構造で、最大の免疫器官とも言われており、体外からの異物から身を守る最前線として働いている。地球上の生物には、自転に伴って生み出される昼夜リズムに同調する生体リズムがあり、皮膚でもその中核をなす時計遺伝子の発現リズムが観察される。この10年来、生体リズムは睡眠覚醒のみでなく、ホルモン、代謝等や免疫など多くの生理機構に関与していることが明らかになってきた。しかし、皮膚の免疫機能がどのような機能を司っているのかは、まだあまり解明されていなかった。

概日リズムの分子機構を研究する京都大学の研究グループは、大部分が均一な細胞で構成される足底のマウス表皮組織に着目し、レーザーマイクロダイセクション法によりさまざまな時間で切り出し、遺伝子発現を網羅的に解析。すると、ケモカインと呼ばれる免疫を制御する遺伝子の一つCXCL14が生体リズムに沿った著明な発現変動を示すことを見出した。

一方、幹細胞におけるケモカインの作用を研究する東京都医学総合研究所の研究グループは、培養した樹状細胞を用いてCXCL14の機能を研究。CXCL14が細菌由来の非メチル化DNAと結合し、樹状細胞のTLR9を活性化するという現象を明らかにした。さらにCXCL14を欠損したマウスを作製し、生理機能を追求していた。そこで、この両グループは皮膚のCXCL14の役割を解明する共同研究を開始した。

CXCL14欠損マウス、皮膚での菌増殖は1日中盛んに

皮膚表面には多数の細菌が常在しているが、その中で悪玉菌として知られる黄色ブドウ球菌を感染させ、その増殖を検索。その結果、夜行性のマウスではCXCL14の発現が高い昼の間は菌の増殖が強く抑えられていたが、発現の低い夜では菌の増殖が盛んになることがわかった。CXCL14を欠損したマウスの皮膚では菌の増殖は、1日中盛んなままだった。

そこで、黄色ブドウ球菌由来のDNAを解析したところ、CXCL14に強く結合し、皮膚でのTLR9を介する自然免疫反応を増強することがわかった。

夜間CXCL14が表皮細胞から分泌、TLR9を介して自然免疫活性化で病原体の過剰増殖から皮膚を保護

続いて、CXCL14発現を検索したところ、夜行性マウスでは昼は高く夜は低かったのに対し、ヒトと同じ昼行性の霊長類であるコモンマーモセットでは、昼は低く夜は高かった。

このことから、CXCL14は夜間に強く表皮細胞から分泌され、表皮に侵入した細菌のDNAに結合し、これが近傍の免疫細胞である樹状細胞に取り込まれ、DNAセンサーであるTLR9を介して自然免疫を活性化し、病原体の過剰増殖から皮膚を保護していることが推察された。

CXCL14発現を高めることで、感染防御初期段階での抗菌作用「高」の可能性

CXCL14などのCXC型のケモカインは従来、CXCR4等の受容体を介してさまざまな細胞機能に関与すると言われてきた。今回、皮膚において、CXCL14はこの経路ではなく、非メチル化CpG DNAと結合し、それを樹状細胞内へ運び込み、そのエンドゾーム内にあるTLR9受容体を活性化し、自然免疫を駆動させるという細胞経路を動かしていることが明らかとなった。

CXCL14は、皮膚表皮のみでなく、口腔粘膜、腸管上皮、呼吸器上皮にも、広く大量に分布しているので、これらの器官でも、菌が上皮を通って粘膜など身体の表層に入ることをブロックしている可能性がある。また、CXCL14は脳内でも多くの細胞に発現しており、今後は、各組織での物質のクリアランス機構におけるCXCL14の役割と分子メカニズムの解明が期待される。

また、注目されるのは、皮膚表皮細胞での、非常に強いCXCL14のリズムだ。このリズムは、今回時計遺伝子産物が、CXCL14遺伝子プロモーターのRORE部位を直接制御することによって生み出されることがわかった。今後、この分子機構を利用して、CXCL14発現を高めることで、感染防御の初期段階での抗菌作用を高めることができる可能性がある、と研究グループは述べている。

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