医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 不安や抑うつにみられるネガティブに偏った記憶の神経メカニズムを解明-富山大ほか

不安や抑うつにみられるネガティブに偏った記憶の神経メカニズムを解明-富山大ほか

読了時間:約 2分54秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年12月16日 AM11:45

ネガティブに偏った記憶と、・抑うつとの関連は?

富山大学は12月15日、不安や抑うつ的になりやすい人では自分でも明確に意識することなく、ネガティブな事柄をより多く思い出しており、このような意識下でのネガティブに偏った想起は、扁桃体外側基底核-前帯状皮質膝下部との機能結合およびコルチゾール-ノルエピネフリン(MHPG)の相乗効果によって説明されることを、ヒトを対象とした研究により世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大学術研究部医学系の袴田優子教授と、北里大学 医療衛生学部の田ヶ谷浩邦教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Psychoneuroendocrinology」に掲載されている。


画像はリリースより

米国の大規模調査によれば、不安障害とうつ病は合わせて一般人口の約4分の1が生涯に1度は経験すると言われている精神障害であり、両者は高頻度に合併しやすいことが知られている。不安障害やうつ病を患っている人、また、未発症でも不安になりやすく落ち込みやすい性格傾向を持つ人では、多数の情報の中でもポジティブあるいはニュートラルな情報は度外視して、ネガティブな情報に対して過剰に注意を向け、それをより多く覚え、思い出しやすい傾向があると言われている。

不安や抑うつ的になりやすい人において、ネガティブに偏った記憶が存在することは臨床的にも学術的にも知られていたが、それがどのような神経生物学的なメカニズムによって生じているかについては不明だった。そこで研究グループは今回、このネガティブに偏った記憶と不安・抑うつとの関連について詳しく調べるとともに、その神経メカニズムについて検証した。

ネガティブに偏った記憶は扁桃体外側基底核の機能結合とコルチゾール-MHPGの相互作用と判明

研究では、うつ病や不安障害に罹患していない100人の成人を対象とした。ネガティブに偏った記憶はポジティブ・ニュートラル・ネガティブを含む情動的な単語をもとに作成した実験課題を用いて、意識的/無意識的なものであるかを区別しながら測定。コルチゾールとMHPGは連続2日間計10時点で測定した唾液をもとに、その基礎分泌量を測定した。コルチゾールはELISA法、また、MHPGはガスクロマトグラフィー質量分析法によって定量化した。脳機能結合については、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて安静状態で撮像したデータに基づき、機能結合解析を実施した。

その結果、不安および抑うつ的な性格傾向のいずれも、自分でも明確な意識を伴わずにネガティブな刺激を思い出しやすいという偏った記憶処理と結びついていた。特に不安になりやすい性格傾向の人ほど、直前に接触した情報について、ポジティブと比べてネガティブなものをより多く取り込み、これを意識下でより多く思い出していたという。そして、扁桃体外側基底核-前帯状皮質膝下部との機能結合およびストレスホルモン・コルチゾールとMHPGとの相互作用は、このようにネガティブに偏った記憶の偏りを説明するものだとしている。

不安障害やうつ病などストレス関連精神障害の発症メカニズム解明につながると期待

今回の研究により、不安や抑うつにみられるネガティブに偏った記憶の神経メカニズムとして、扁桃体外側基底核―前帯状皮質膝下部との脳機能結合およびストレスホルモンであるコルチゾールとMHPGとの相互作用が密接に関与することを、ヒトにおいて世界で初めて示された。

従来の研究では、扁桃体外側基底核と膝下部を含む前帯状皮質吻側部の神経連絡が恐怖に関連した記憶を覚える上で重要な役割を果たすことが確認されていた。今回の研究で扁桃体外側基底核―前帯状皮質膝下部との機能結合が、最近に経験した(必ずしも恐怖に関連しない)ネガティブな記憶の潜在的な想起にも結びついていることが明らかにされたことは、臨床のみならず、神経科学という学問においても重要な示唆を持つと考えられる。

また、ストレス刺激等によって誘発されたコルチコステロン(ヒトにおけるコルチゾールに該当)とノルエピネフリンレベルの上昇が、相乗的にネガティブな記憶を覚えたり、長期間にわたり保持したりする過程に影響を及ぼしていたことを示した動物研究の知見と部分的に一致し、さらに今回の研究で、ヒトにおいてコルチゾールとノルエピネフリン(その主要代謝産物としてのMHPG)の基礎分泌が、ネガティブに偏った記憶の潜在的な想起に相乗的な影響を及ぼしていたことが新たに判明した。

「本知見は、不安障害やうつ病をはじめとするストレス関連精神障害の発症メカニズムの解明に寄与すると考えられる。今後こうした記憶の偏りを標的とした心理的介入法は、不安障害やうつ病に対する有効な治療および予防法のひとつとなることが期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 肺がんの新規ALK阻害薬治療抵抗性、EGFRシグナルの関与を発見-京都府医大ほか
  • 妊娠時低酸素曝露が仔ラットの骨格筋に影響、DOHaD学説の新知見-東京医科大ほか
  • 妊娠成立に必要な胚着床機構をマウスで解明、不妊症の原因究明に期待-麻布大ほか
  • 【インフルエンザ流行レベルマップ第3週】定点当たり報告数9.59に増加-感染研
  • ヒトの持久運動パフォーマンス向上に貢献する腸内細菌を発見-慶大先端研ほか