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生活保護受給者は、2型糖尿病の有病割合が公的保険加入者より高い-京大ほか

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2021年11月17日 AM10:45

200万人のレセプトデータ解析で糖尿病の実態調査

京都大学は11月16日、全国の生活保護受給者200万人のレセプトデータを用いて生活保護受給者の糖尿病の年齢別、性別、地域別の実態を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の仙石多美研究員、高橋由光准教授、中山健夫教授らと、東京都健康長寿医療センター研究所の石崎達郎研究部長の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Epidemiology and Community Health」に掲載されている。


画像はリリースより

生活保護制度は、被保護者の最低限度の生活を保障するとともに、自立の助長を図ることを目的としている。自立助長を図る基礎として、健康状態を良好に保つことは重要であるが、多くの健康上の課題を抱えている可能性がある。厚生労働省は、データに基づいた、生活保護受給者(被保護者)に対する生活習慣病予防・重症化予防のための健康管理支援を推進しているが、生活保護受給者の全国規模での生活習慣病の罹患状態はわかっていない。そこで研究グループは、生活保護受給者の2型糖尿病の有病割合を、性別、年齢別、地域別に調査。さらに、公的医療保険加入者との比較も行った。

今回の研究は、生活保護受給者と公的医療保険加入者の1か月のレセプトデータを用いた横断研究。生活保護受給者のデータは2015年、2016年、2017年に実施された医療扶助実態調査の調査票情報を、公的医療保険加入者は2015年NDB(匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース)サンプリングデータセットを用いた。レセプト上で、糖尿病の傷病名(1型糖尿病を除く)があり、かつ糖尿病治療薬を処方されているものを2型糖尿病と定義した。粗有病割合および標準化有病割合(標準人口:1985年日本人モデル人口)を算出し、性別、年齢別、地域別(47都道府県別および112地域別)で算出。地域別(112地域)においては、マルチレベルロジスティック回帰分析も実施した。

粗有病割合7.7%、40~50代で有病割合高く、地域によるばらつきも

2015年において、生活保護受給者の2型糖尿病の粗有病割合は7.7%。外来のみでは7.5%(公的医療保険加入者では4.1%)であり、標準化有病割合(外来のみ)は、生活保護受給者3.8%、公的医療保険加入者2.3%だった。加齢とともに有病割合が上昇したが、生活保護受給者では、公的医療保険加入者に比べ、40歳代、50歳代での有病割合が高くなった。47都道府県別では4.0~10.6%(標準化有病割合1.9%~5.0%)の幅が見られた。112地域別でのオッズ比も0.31~1.51の幅が見られた。

生活保護受給者の2型糖尿病の有病割合は、公的医療保険加入者よりも高く、地域的なばらつきも見られた。今後、糖尿病の重症化を防ぐためにも地域レベルで実態を把握し対策を立てていくことが求められる。

社会格差や健康格差の是正、データに基づいた政策の一助に

新型コロナウイルス感染症の影響による生活困窮や、社会格差や健康格差が社会的問題となるなか、生活保護の社会的意義は、ますます高まっている。今回の研究は、生活保護受給者の健康状態はどのようなのだろうか、そして、糖尿病の人は多いのだろうかという、極めて基礎的な問いから始まった。しかし、ある集団の「糖尿病の有病」というシンプルな情報を得るにも、医師により診断されている人、糖尿病治療薬を服薬している人、健診で指摘された人、血液検査(例えばHbA1c)においてある一定の値以上を示した人など、さまざまな考え方があり、一概に示すことは想像以上に難しい問いである。

今回、日本で初めて、医療扶助実態調査とNDBという日本全体のレセプトデータを活用して、全国レベルで生活保護受給者と公的医療保険加入者の2型糖尿病有病割合を同基準で比較した。日本では、特定健診やレセプトのデータを健康増進や病気予防に活用するデータヘルスという取り組みが進んでいる。生活保護受給者や生活困窮者の最低限度の生活の保障、自立の助長は、一時的な感情や印象で議論せず、健康管理支援においても、データを活用してよりよい医療の提供を目指すことが重要だ。「今回の研究は、社会格差や健康格差の是正、データに基づいた政策を行うための一助になると考えている」と、研究グループは述べている。

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