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日本人ALL、遺伝子解析で好発の予後不良病型2つを新規同定-名古屋医療センターほか

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2021年10月28日 AM11:15

AYA・成人急性リンパ性白血病は小児に比べ病型分類が不十分だった

名古屋大学は10月27日、成人B細胞性急性リンパ性白血病(フィラデルフィア染色体陰性)354症例に対し、その分子病態を明らかにするため、RNAとDNAを用いた網羅的シーケンスを実施したと発表した。この研究は、名古屋医療センター臨床研究センター高度診断研究部の安田貴彦室長、真田昌部長、名古屋大学大学院医学系研究科細胞遺伝子情報科学の早川文彦教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Blood」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

小児急性リンパ性白血病は、近年の治療法の進歩により、約90%の患者に長期的な生存が見込めるようになった。また、AYA・成人急性リンパ性白血病においても一部の病型(フィラデルフィア染色体陽性)では、分子標的薬の導入により治療成績の劇的な改善がもたらされている。しかしながら、その他のAYA・成人急性リンパ性白血病は治療成績が満足いくものではなく、現在の臨床上の大きな課題となっている。

急性リンパ性白血病は分子レベルでは、さまざまなタイプ()が混在しており、病気の原因によって分類が試みられている。病型によって、見られる症状や病気の予後が変わり、適した治療法も変わってくる。小児と比較してAYA・成人急性リンパ性白血病では、この病型分類が十分に行われておらず、その結果として治療成績の改善が遅れていると考えられる。特に、AYA・成人急性リンパ性白血病の治療において、同種造血幹細胞移植術を実施するかどうかの判断は重要であり、急性リンパ性白血病の病型分類はこの判断をサポートする有用な情報になる。

B細胞性急性リンパ性白血病354症例を対象にDNA、RNAを解析

急性リンパ性白血病はB細胞性とT細胞性に大きくわかれるが、研究グループはより頻度が高いB細胞性急性リンパ性白血病に着目し、日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)の研究で収集された354症例の患者試料を用いて研究を行った。フィラデルフィア染色体陽性B細胞性急性リンパ性白血病は、すでに別カテゴリーとして確立されているため、今回の解析からは除外した。遺伝子解析には、DNAを対象とした解析(DNAシーケンス)とRNAを対象とした解析()の2種類があるが、それぞれがん研究で行われる用途は異なる。前者は主として遺伝子変異解析を目的に行われるが、後者は融合遺伝子の同定と遺伝子発現解析を目的に行われる。今回の研究では両方(DNA・RNA)の解析を実施し、得られた複数の情報を組み合わせることにより、詳細な病型分類を試みた。

」が約20%を占める日本最大の病型と判明

RNAシーケンスで得られた遺伝子発現情報を用い、tSNE法という方法で各症例を分類した。その結果、B細胞性急性リンパ性白血病はグループを形成し、複数のクラスターからなることがわかった。また、キーとなる遺伝子異常を含めた統合的な解析を行ったところ、遺伝子異常とグループ形成には密接な関係があると判明。この解析により、B細胞性急性リンパ性白血病の約85%の症例が18種類の独立した病型に分けられることが明らかとなり、それぞれの頻度を年齢別に算出した。

算出の結果、AYA・成人B細胞性急性リンパ性白血病ではZNF384融合遺伝子を特徴とするZNF384病型が約20%を占め、日本最大の病型であることが明らかになった。この結果は欧米の報告(~3%程度)とは大きく異なっており、日本人もしくはアジア人固有の特徴である可能性がある。また、ZNF384病型に対しDNAシーケンスによる変異解析をしたところ、FLT3、ETV6、EZH2など他の病型ではまれな遺伝子異常が高頻度で見つかった。

新規病型「-high」と「/2-mut」を発見

この研究で認められた18の病型のうち、16は先行研究ですでに知られている病型だが、さらに新規の2病型の存在が明らかになった。1つはCDX2遺伝子の高発現を特徴とする病型(CDX2-high病型)。CDX2遺伝子は一次造血の造血細胞で発現し、造血細胞の分化制御を行う遺伝子だが、二次造血においては通常、この遺伝子発現は抑制されている。しかし、CDX2-high病型では、CDX2遺伝子のプロモーター領域が脱メチル化しており、病型特異的にCDX2遺伝子の高発現が確認され、特徴的な発現パターンを示すことがわかった。また、これらの病型に属する約80%の症例に1番染色体長腕の増幅が認められた。今回の解析で11症例がこのグループに該当し、B細胞性急性リンパ性白血病の約3%に見られることが明らかとなった。

もう1つのグループは、IDH1とIDH2変異を特徴とする病型(IDH1/2-mut病型)。研究コホートにおいて、3症例にIDH1 R132C変異、4症例にIDH2 R140Q変異(ともにホットスポット変異)を認めた。発現解析の結果、これらの変異を有する症例は全例で特徴的なグループを形成するとともに、メチル化解析においても他のB細胞性急性リンパ性白血病とは明瞭に区別されるDNA高メチル化を示すグループであることがわかった。また、CDX2-high病型とIDH1/2-mut病型の頻度をAYA・成人と小児で比較したところ、AYA・成人で両新規病型の頻度が有意に高いことがわかった。

ZNF384病型は予後良好、CDX2-high病型とIDH1/2-mut病型は予後不良

最後に、分類された病型ごとに予後解析を実施した結果、病型ごとに予後が大きく異なった。最大病型であるZNF384病型は5年全生存率70%以上と予後良好な傾向をもつと判明。一方で、新規に同定した2つの病型(CDX2-high病型とIDH1/2-mut病型)は5年全生存率30%以下と極めて予後不良であり、予後不良として知られるPh-like病型と同程度であることが明らかとなった。

今後はゲノム医療の臨床現場への導入により日常臨床で病型分類が行われ、病型に応じた最適な治療を実施することが期待される。特に、今回新たに同定された予後不良なCDX2-high病型とIDH1/2-mut病型に対しては、同種造血幹細胞移植の適応をより積極的に検討するなど新しい治療戦略の考案が必要であると研究グループは指摘している。また、遺伝子変異情報により、IDH1/2-mut病型とZNF384病型に対しては、それぞれIDH阻害剤、FLT3阻害剤の治療効果が期待されることが明らかとなり、研究グループは、同グループを中心にさらなる基礎的・臨床的な研究を予定している。

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