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脂肪分と糖分の過剰摂取、血管異常の発生部位が異なることをラットで確認-近大ほか

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2021年09月16日 AM10:45

高脂肪食と高シュークロース食摂取で、どの部位の大動脈と周囲の脂肪組織に影響が及ぶ?

近畿大学は9月14日、脂肪分を過剰に摂取した場合と、糖分を過剰に摂取した場合では、異常が生じる血管の部位が異なることを発見し、その違いが生じる原因も明らかにしたと発表した。この研究は、同大近大学院農学研究科の佐宗宰博士前期課程2年生(当時)、久後裕菜博士研究員、財満信宏教授、森山達哉教授ら、大木製薬株式会社の研究グループによるもの。研究成果は、「Adipocyte」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

動脈硬化や動脈瘤などの血管疾患には、日々の食生活が影響していると言われている。最近の研究では、大動脈の血管周囲にある脂肪組織が、血管機能の調節に重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。この脂肪組織の炎症を引き起こす原因の一つとして、脂肪分や糖分を多く含む食事が挙げられている。先行研究により、脂肪分や糖分の過剰摂取が、血管疾患や代謝性疾患の病態にさまざまな影響を及ぼすことがわかってきている。

これまでに研究グループは、ラットを用いた研究で、脂肪分を過剰に含む食事(高脂肪食)が腹部大動脈瘤の悪化を促進するのに対して、糖分を過剰に含む食事(高シュークロース食)は大きな影響が生じないことを発見している。しかし、摂取する成分によって血管への影響に違いが生じる原因は不明だった。

そこで今回の研究では、ラットに高脂肪食と高シュークロース食、およびコントロール食を5週間与えた後、腹部と胸部の大動脈における免疫バランスと、大動脈周囲の脂肪組織にどのような影響が生じるかを検証した。

主に、高脂肪食は白色脂肪細胞、高シュークロース食は褐色脂肪細胞に影響

まず、腹部大動脈に対する影響の違いを確認したところ、高脂肪食が腹部大動脈周囲の脂肪組織の悪性化を誘導し、腹部大動脈の免疫バランスを崩す一方で、高シュークロース食は腹部血管周囲の脂肪組織の悪性化を誘導せず、腹部大動脈の免疫バランスにも大きな影響を与えないことがわかった。これにより、食事内容によって腹部大動脈瘤のような腹部の血管疾患の進展に差が生じる一因は、高脂肪食と高シュークロース食とで血管周囲脂肪組織への影響が異なるためであることが示唆された。

一方、腹部大動脈には大きな影響を与えなかった高シュークロース食は、胸部大動脈とその周囲脂肪組織には悪影響(大動脈の免疫バランス異常と周囲脂肪組織の悪性化の誘導)を与えることが明らかになった。さらに、高脂肪食は胸部大動脈とその周囲脂肪組織には大きな影響を与えないことがわかり、摂取する成分によって異常が生じる血管の部位が異なることが示唆された。

この原因を明らかにするために、腹部と胸部それぞれの血管周囲脂肪組織の詳細な解析を行ったところ、高脂肪食と高シュークロース食で影響を及ぼしやすい脂肪細胞の種類が異なることが示された。高脂肪食は主に白色脂肪細胞に影響を与え、高シュークロース食は主に褐色脂肪細胞に影響を与えることがわかり、主に白色脂肪細胞で構成される腹部の血管周囲脂肪組織は、高脂肪食摂取の影響を受けやすく、褐色脂肪細胞が多く存在する胸部の血管周囲脂肪組織は、高シュークロース食摂取の影響を受けやすいことが示唆された。

なお、実験期間内では、ラットの体重や内臓脂肪に大きな変化は観察されず、食事内容が血管周囲脂肪組織や血管に及ぼす影響は、体重や内臓脂肪の変化よりも先に顕在化する可能性があることも示されたとしている。

血管周囲脂肪組織の悪性化が血管の病的状態を引き起こす可能性

本研究によって、脂肪分と糖分の過剰摂取が及ぼす影響の違いが明らかになったことから、今後は人を対象とした栄養学研究などの解析時に、新たな研究観点を取り入れることが可能となった。研究グループは今後も研究を継続し、血管疾患と食生活の関係を多角的に解析していく予定だという。

また、今回の研究では、血管周囲脂肪組織の悪性化が血管の病的状態を引き起こすことが示唆された。先行研究では、血管周囲脂肪を健全に保つことが血管の健康維持に重要であると報告されているが、まだあまり着目されていない「血管周囲脂肪組織」の健全性維持を目指した研究が、新たな血管疾患予防法の提案につながると期待される。

なお、本研究で使用した食餌は、高脂肪食と高シュークロース食の差異を明確にするために設計された実験用のものであり、一般的な食事と比較して極端なレシピになっている。そのため、例えば腹部大動脈瘤の患者が脂肪分を全く取ってはならない、ということを示唆する研究ではない、としている。

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