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血液適合性ポリマーPMEAの高靭性化と3Dプリンティングに成功-名大ほか

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2020年10月06日 AM11:30

従来のPMEAは柔らかく粘着質、成形加工は難しく

名古屋大学は10月5日、血液適合性ポリマーとして知られるPoly(2-methoxyethyl acrylate)()に直径約100nmのシリカ微粒子を高濃度で分散させると、力学的に高靭性化し、さらに、3Dプリンターを使用してさまざまな形状に加工できることを見出したと発表した。これは同大大学院工学研究科の竹岡敬和准教授らの研究グループとユニチカ株式会社の浅井文雄研究員らと共同研究によるもの。研究成果は、米国化学会が発刊する「ACS Applied Materials and Interfaces」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

これまでに、多くのポリマー材料について、その生体適合性に関する検討が行われており、それらポリマー材料は医療機器やインプラント材料へ実用化され、人間の健康を支える医療の中で重要な役割を果たしている。血液や人体に直接接触する生体適合性材料として、その利用可否を左右する特性の1つとして、血液適合性は非常に重要であり、特に血小板のポリマー材料表面への付着を抑制することは、生体適合においてさまざまな問題となる血栓の形成拡大を避けるために必要不可欠だ。

その中でも、優れた血液適合性を有するポリマーPMEAは、水溶性が低い次世代の血液適合性材料として、ECMO(体外式膜型人工肺)をはじめとする血液と接触する医療器具に広く利用されている。一方で、PMEAはガラス転移温がマイナス30℃以下であることから、体温以上の環境下では粘着質で水あめのような性状であり、PMEAのみでは自立可能な成型体を作製することが難しく、主な用途がコーティング剤に限られていた。近年、PMEAから自立可能な成形体を得る研究がいくつか報告されており、医療器具製造におけるスマートな加工技術の実現に向けた新たなPMEAの成形手法の開発が課題となっている。

PMEAに球状シリカ充填することで力学物性を改善、PETに比べて血小板の付着抑制に優れる

研究グループは、細胞外マトリックスのひとつである角膜の構造をヒントに、Diethylene Glycol Monomethyl Ether Methacrylate (PMEO2MA)とサブミクロン球状シリカ粒子から構成される高靭性な複合エラストマーを調整した。この成果を基に、PMEAに球状シリカ充填することで、PMEAの課題であった力学物性を改善し、血液適合性に優れた複合エラストマーが得られることを見出した。

この複合エラストマーの破断応力と破断ひずみは、シリカ充填量の増加に伴って向上し、破壊エネルギーはシリカ未充填のPMEAに対して15倍に向上した。また、複合エラストマーの一軸伸長下における応力-歪みの関係は、歪み量が大きくなると応力が大きく立ち上がる非線形性を示し、生体軟組織の力学的性質に似た特徴を有していることがわかった。このような応力-歪みの関係における非線形性は、カタストロフィの防止に役立つ。また、複合エラストマーの血小板粘着性試験の結果、複合エラストマーの血小板粘着数はPMEAと遜色のない値であり、PETに比べて血小板の付着抑制に優れていることがわかった。

SLA式3Dプリンターで自由な形状を造形も、より細い人工血管の開発に期待

さらに、この複合エラストマーはSLA式3Dプリンターを用いて、複雑な形状に成形することが可能であることも確認された。近年、さまざまな方式の3Dプリンターの開発が進んでおり、特にSLA式3Dプリンターは一般消費者向けの小型で比較的安価な機種が普及している。今回の研究手法を用いれば、高度な加工技術、高価な製造装置を使わずに、安全かつ迅速にPMEA-シリカ複合エラストマーの成形体を得ることができる。

PMEAと球状シリカからなる複合エラストマーの3Dプリンティングの実現により、入手容易で人体に安全な材料から、容易に自由な形状を造形できる可能性を示した。現在、普及している人工血管には主にPETまたはフッ素系ポリマーが使用されているが、直径が5~6㎜未満では血栓による閉塞が避けられず、より大きな直径の製品に限られている。しかし、今回の研究で見出されたPMEA-シリカ複合エラストマーを用いることで、これまでよりもより小さな直径の人工血管に利用することができれば、新たな治療方法の確立が期待できる。「複合エラストマーの血液適合性材料としての実用化に向けては、より詳しい血液適合性の評価など詳細な検討が必要だが、今回の研究成果は、新たな医療器具開発の指針として、医療技術発展への貢献が期待される」と、研究グループは述べている。

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