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インフルエンザウイルス感染局所の炎症応答メカニズムを解明-東大医科研

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2020年06月22日 AM11:30

ウイルスタンパク質のM2やPB1-F2が炎症を起こす詳細なメカニズムは?

東京大学医科学研究所は6月16日、インフルエンザウイルスを感染させたマクロファージでは、核やミトコンドリア由来のDNAが細胞質中やマクロファージ細胞外トラップと呼ばれるネット状の構造物中に多く検出できることを見出したと発表した。この研究は、同研究所感染症国際研究センターウイルス学分野の一戸猛志准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「iScience」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

インフルエンザウイルスのM2タンパク質は、細胞内イオンバランスを変化させることによりNLRP3インフラマソーム依存的なIL-1βの産生を誘導する。またインフルエンザウイルスのPB1-F2タンパク質は、ミトコンドリア由来活性酸素種(ROS)依存的にNLRP3インフラマソームを活性化させることが報告されている。しかし、これらのウイルスタンパク質がどのようにNLRP3インフラマソームを活性化させているのか、その詳細なメカニズムは不明だった。

ウイルスタンパク質<酸化DNA<NLRP3インフラマソーム依存的IL-1β産生

今回、研究グループは、インフルエンザウイルスを感染させたマクロファージでは、核やミトコンドリア由来のDNAが、細胞質中やマクロファージ細胞外トラップと呼ばれるネット状の構造物中に多く検出できることを発見。これらのDNAには酸化DNAが含まれていた。

そこで研究グループは、インフルエンザウイルスが酸化DNAを誘導するメカニズムを解析。その結果、インフルエンザウイルスのM2タンパク質は単独で、PB1-F2タンパク質はウイルスRNA存在下で酸化DNAを誘導していた。インフルエンザウイルスを感染させたマクロファージに酸化DNAを加えるとIL-1βの産生が増加し、これはNLRP3特異的な阻害剤で抑制されたことから、インフルエンザウイルスが誘導する酸化DNAはNLRP3インフラマソーム依存的なIL-1βの産生を増幅させていることが示唆された。

DNAセンサーAIM2がRNAウイルスであるインフル感染にも重要だった

また細胞内DNAセンサーとして機能するAIM2を欠損したマクロファージでは、野生型のマクロファージと比較してインフルエンザウイルス感染後のIL-1βの産生が有意に低下した。これにより、インフルエンザウイルスが誘導する核またはミトコンドリア由来DNAは、2インフラマソーム依存的なIL-1βの分泌を促進させていることが示唆された。

今回の研究成果は、未解明であったインフルエンザウイルスM2タンパク質やPB1-F2タンパク質によるNLRP3インフラマソームの活性化機構を明らかにしただけでなく、DNAウイルスの細胞内センサーとして機能するAIM2インフラマソームがRNAウイルスであるインフルエンザウイルスの感染時にも重要な役割を果たしていることを示した重要な知見。これまでの常識では、RNAウイルスであるインフルエンザウイルスの感染には、細胞内のRNAセンサーが重要な役割を果たしていると考えられてきたが、今後はDNAセンサーの役割についても考慮する必要がある。研究グループは、「これらの知見を生かして、今後は新型コロナウイルスが強い炎症反応を引き起こすメカニズムの解析にも取り組むことにより、新型コロナウイルスがサイトカインストームなどによりヒトで重症化するメカニズムの解明を目指す」と、述べている。

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