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ゾレア、アスピリン喘息患者63%でアスピリン過敏性を消失-相模原病院ほか

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2020年05月20日 AM11:45

AERD16例対象に、オマリズマブもしくは偽薬を4週間に1回、合計3回、二重盲検比較試験で皮下注射する臨床試験

)は5月19日、IgEが関与するアレルギー性喘息の治療薬である抗IgE抗体オマリズマブ(商品名:(R)、ノバルティスファーマ株式会社)について、非アレルギー性とされるアスピリン喘息(解熱鎮痛薬過敏喘息、AERD)に有効なことを確認したと発表した。この研究は、国立病院機構相模原病院の林浩昭医師らと同院臨床研究センター客員研究部長・湘南鎌倉総合病院免疫・アレルギーセンターの谷口正実研究開発代表者、名古屋大学大学院呼吸器内科学、佐賀大学医学部分子生命科学講座らの研究グループによるもの。研究成果は、米国胸部学会誌「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

AERDは、重い喘息と好酸球性副鼻腔炎を特徴とし、大人の喘息患者の10%を占める。有効な治療法はなく、国際的にも大きな課題だ。AERDの特徴として、(1)アスピリンなどの解熱鎮痛薬で誘発される急激な喘息発作やアレルギー症状、(2)アスピリンなどを避けていても日常的に持続する重い喘息や鼻症状、(3)鼻ポリープを伴う重症の好酸球性副鼻腔炎、(4)アレルギーを悪化させる化学伝達物質であるシスティニルロイコトリエン(CysLT)が体内で過剰に産生される、の4点が知られている。また、AERDは遺伝することはなく、成人後に発症し、その体質は一生続く。機序は明らかになっていない。動物モデルや細胞モデルがないため、AERD患者の協力により、その研究が可能となる。

これまでに研究グループは、観察研究において、アスピリン過敏反応ではマスト細胞の活性化による大量のCysLT産生を認めること、オマリズマブを1年間継続すると、AERDの特徴である前述の(2)(3)(4)が改善し、マスト細胞の活性化も正常化することを証明している。しかし、偽薬を用いた二重盲検試験でのオマリズマブの効果は証明されていないため科学的証拠は十分でなく、また、AERDの本質である、前述の(1)のアスピリン感受性への効果も明らかではなかった。

オマリズマブは、IgEが関与する重症アレルギー性喘息などに対して、10年以上にわたって世界の医療現場で使用され、その安全性は確立されている。今回の研究では、AERD患者16例の協力のもと、オマリズマブもしくは偽薬を4週間に1回、合計3回、二重盲検比較試験で皮下注射する臨床試験を実施した。

オマリズマブがAERDの症状改善だけでなく、特徴的な4つの病態全てに効果があることを証明

試験の結果、日常の喘息や副鼻腔炎症状だけでなく、アスピリン内服検査(国際基準の安全な内服試験)で誘発される「CysLTの増加」「マスト細胞の活性化」「喘息や副鼻腔炎症状」などに対して、全て有意に改善したという。さらに10/16例(63%)のAERD患者において、アスピリンに対する反応(アスピリン感受性)が完全になくなることが判明した。また、残りの6例も症状の改善を認めたという。

この効果の機序について、研究グループは、明らかにマスト細胞の活性化やシスティニルロイコトリエン産生が減少したことから、オマリズマブが(IgE受容体を高発現している)マスト細胞を安定化させた、と推定している。

今回の無作為化二重盲検試験により、オマリズマブがAERD患者の症状改善だけでなく、特徴的な4つの病態全てに効果があることが証明された。さらに、AERD患者の本質であるアスピリン感受性も消失させることが判明した。研究グループは、同試験により、AERDに対するオマリズマブの適用追加が得られたわけではないとしつつ、今後、今回の研究の発展により、オマリズマブが多くの重症AERD患者の症状改善に貢献することが期待される、と述べている。

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