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指定難病IgG4関連疾患、HLA-DRB1・FRGR2B遺伝子との関連を解明—京大

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2019年09月13日 AM11:45

免疫系の希少難病、症状が多様なため疾患解析が困難

京都大学は9月11日、国際診断基準を満たす患者857例のDNAを用いて全ゲノム関連解析を行い、HLA- DRB1遺伝子とFCGR2B遺伝子に、(IgG4-RD)」と有意な関連を見出したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の松田文彦教授、寺尾知可史助教(現・理化学研究所チームリーダー)、千葉勉教授(現・関西電力病院長)らと、関西医科大学の岡崎和一教授らの研究グループが、全国の50医療機関と協働で行ったもの。研究成果は、英国の国際学術誌「The Lancet Rheumatology」にオンライン掲載された。


画像はリリースより

IgG4-RDは、2015年度に指定難病になった免疫系の希少難病。発見から診断基準制定まで常に日本が世界をリードしてきた。患者により異なる臓器に症状が出るため、自己免疫性膵炎、ミクリッツ病など異なる20以上の病気として報告されてきたが、自己免疫性膵炎で血中のIgG4が上がるという日本からの報告を契機として、疾患の統合・再分類が進み、2011年に日本から「疾患名統一」と「包括診断基準」が提唱され、国際的に承認された。IgG4-RDの治療は、多くの場合ステロイドが有効だが、各臓器疾患からなる全身疾患であり多彩な病変を認めるため、治療適応や治療法は異なる。そのため、今後さらなる研究の必要な疾患とされている。

IgG4-RDの、指定難病としての認定要件はかなり厳しく、臨床調査個人表が認められている患者はごく一部と考えられ、現状ではIgG4関連疾患全体の疫学情報の把握は困難で、日本における正確な患者数の把握もできていない。また、さまざまな疾患が集まった概念のため、概念自体も変遷しており、動脈、消化管、内分泌疾患など新領域疾患も明らかにされつつあるが、前述のとおりIgG4-RDは多くの症例で複数臓器に病変が及ぶ全身疾患であり、現在までは個々の該当科において調査、研究がなされてきたため、IgG4-RDの疾患情報が集約できていない。

IgG4-RDの遺伝因子の探索は、候補遺伝子を限定した過去の解析で、HLA遺伝子、FCRL3遺伝子、CTLA4遺伝子およびKCNA3遺伝子が疾患関連遺伝子として報告されている。しかし希少疾患であることに加え、診断が困難であるため、いずれの研究においても使用された検体数は少なく、検体選択のバイアスで結果が過大評価されている可能性も残っている。また、網羅的ゲノム解析は日本人、西洋人でも現在までに行われていない。

主な感受性遺伝子は、HLA-DRB1遺伝子とFCGR2B遺伝子

研究グループは、日本全国のIgG4-RD専門医の属する50の研究・医療機関からなる多施設共同研究を組織し、IgG4関連疾患患者の臨床情報を集積したデータベースを構築。加えて、国際診断基準を満たす患者857例のDNA検体を収集した。対照群としては、ながはまコホートの参加者の地域住民2,082名のDNA検体を用いた。

IgG4-RDは希少疾患であり、独立検体群による再現性の検証が困難であるため、患者検体採取時で2つのセットに分けて解析し、最終的にそれらを統合した。ゲノム上の95万 8,440か所の一塩基変異(SNV)の頻度分布を患者と対照群で比較して関連解析を実施したところ、染色体6番のHLA遺伝子座(rs615698でp=1.1×10-11)と染色体1番のFCGR遺伝子座(rs1340976でp=2.0×10-8)に有意な関連が検出された。これらの領域の詳細な解析から、HLA遺伝子座では、HLA-DRB1遺伝子が、FCGR遺伝子座では、FCGR2B遺伝子が疾患と関連することが明らかになった。

両者ともSLEの主な感受性遺伝子、ただし疾患に対する影響は逆向き

HLA遺伝子については、患者と対照群の一人ひとりの持つ6種類のHLA 遺伝子(HLA-A、-B、-C、-DPB1、-DQB1、-DRB1)の対立遺伝子(アレル)をこの領域のタイピング結果から推定し、患者と対照群での頻度の比較を行ったところ、HLA-DRB1*04:06が疾患感受性を、HLA-DRB1*09:01、HLA-DQB1*03:03が疾患抵抗性を持つことが明らかになった。HLAは抗原提示に関わるため、HLAタンパク質のどの部位のアミノ酸残基が疾患感受性・抵抗性を決めているのかを検討した。予測されたアレルのアミノ酸配列をアラインし、N末端側から一つひとつのアミノ酸残基の種類の分布を患者と対照群で比較した。その結果、HLA-DRB1タンパク質の抗原提示部位であるGβドメインの7番目のアミノ酸残基(DRB1-GB-7)が疾患の感受性と強く関連する(p=1.7×10-14)ことが明らかになった。具体的には、DRB1-GB-7がバリンであるとオッズ比が2.01倍に、またアスパラギン酸であるとオッズ比が0.57倍になることがわかった。DRB1-GB-7を持つHLA-DRB1アレルはHLA-DRB1*04:06のほかに、HLA-DRB1*04:03、HLA-DRB1*04:05、HLA-DRB1*04:10があり、こういったアレルを持つ人はIgG4-RDを発症しやすい可能性があることが示された。興味深いことに、DRB1-GB-7は関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)とも関連するが、SLE においてバリンはIgG4-RDと逆で、疾患抵抗性を示すことが報告されている。

FCGR2Bは、複数のFCGR タンパク質の中で、唯一Bリンパ球で発現し、抑制的なシグナルを伝達する。FCGR2B遺伝子は、SLEの主な感受性遺伝子として知られている。今回同定されたrs1340976は、SLEの疾患感受性と関連するSNVのrs1050501と強い連鎖不平衡の関係にあったが、SLEではCヌクレオチドが疾患感受性を示す一方で、IgG4-RDでは逆のアレルのTが疾患感受性を示した。さらに、rs1340976はFCGR2B遺伝子の発現と強い相関があり、また炎症で腫張を認める臓器の数や診断時の血中IgG4濃度とも関連することが示された。

これらの結果から、IgG4-RDは、HLA-DRB1遺伝子とFCGR2B遺伝子が主な感受性遺伝子であることが明らかになった。この2つの遺伝子は、SLEにおいても主たる感受性遺伝子だが、その疾患に対する影響は逆向きであることがわかった。これらの遺伝子がどのように疾患発症、病態や重症度に関わるのか、今後の研究によって明らかになると期待される。

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