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関節リウマチの病態に関わる転写因子「Sox4」を同定-京大

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2018年09月27日 PM01:15

患者の関節の中にあるT細胞の機能を調査

京都大学は9月25日、関節リウマチの病態に関わる転写因子を同定したと発表した。この研究は、同大ウイルス・再生医科学研究所/、同リウマチセンターならびに病理診断科らとの共同研究によるもの。研究成果は「Nature Communications」オンライン公開に公開されている。


画像はリリースより

これまでに研究グループは、炎症を起こしている患者の関節の中にあるT細胞の機能を調べ、PD-1という分子を表面に発現するヘルパーT細胞がリンパ球を集積させる因子「」を分泌し、炎症のある部分にリンパ濾胞とよばれるリンパ球の集まりを誘導することを見出していた。このT細胞は、関節リウマチに強く関係する新しい種類の細胞であることが示されてきたものの、どのような転写因子が鍵となって、このT細胞でCXCL13が作られるのかは未解明な部分が多かった。

同グループが研究したヘルパーT細胞は、細胞の表面の分子の発現がPD-1(hi)CXCR5(-)という特徴を有しており、Tph細胞とも呼ばれる。この細胞は、血液の中ではCXCL13をほとんど作らないが、炎症のある関節ではCXCL13を作ることから、炎症によって何かの転写因子が増加し、その結果CXCL13が作られると考えたという。

関節リウマチなどの炎症を伴う免疫の病気で重要な役割か

そこで、まだ分化していない血液のヘルパーT細胞をさまざまな炎症条件で刺激することで、PD-1(hi)CXCR5(-)の特徴を持ち、CXCL13を作るTph細胞が産生されるかどうかを調べた。その結果、TGF-βが存在してIL2が抑えられている様な炎症条件で、そのようなヘルパーT細胞が産生されることが判明した。次にこのヘルパーT細胞のすべての遺伝子の変化を調査したところ、転写因子の中では「」という遺伝子の発現だけが増えていることが明らかになった。このSox4を強制的にT細胞で発現させると、T細胞がCXCL13を作ることが確認できたとしている。

さらに、実際の患者の炎症のある患部で、ヘルパーT細胞がSox4を発現しているのかを調べたところ、Sox4は増加しており、関節でのSox4の発現が強いとCXCL13により生じるリンパ濾胞が増加することがわかった。これにより、Sox4は関節リウマチなどの炎症を伴う免疫の病気で重要な役割を果たすことが示されたとしている。

今回の成果について、研究グループは「今後さらにSox4の発現を制御する方法や、Sox4のT細胞での働きをより詳細に解析することにより、ヒトの新たな免疫現象が明らかになるだけでなく、これまで治療効果が十分ではなかった免疫異常や炎症により生じる病気について、新たな治療法の開発につながるような知見が期待される」と述べている。

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