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悪性胸膜中皮腫に対するG47Δを使用したウイルス療法の臨床試験開始-東大

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2018年08月06日 AM11:45

アスベストを原因とした悪性胸膜中皮腫治療で

東京大学は8月2日、同大医科学研究所附属病院にて、悪性胸膜中皮腫に対するウイルス療法の臨床試験を開始したことを発表した。この試験は、同病院脳腫瘍外科の藤堂具紀教授を総括責任者とし、東京医科大学呼吸器甲状腺外科の池田徳彦教授と共同で行われる。


画像はリリースより

悪性胸膜中皮腫は、主として胸腔に発生する悪性腫瘍で、(石綿)が主な原因と考えられている。アスベストは吸入被曝後30~40年経過してから悪性胸膜中皮腫が発生するため、今後も日本にて患者数が増加し続けると危惧されている。また、初期は自覚症状に乏しく、進行すると胸水が貯留するため、胸痛、息切れ、咳嗽、体重減少などの症状が現れる。治療は手術、放射線治療、化学療法が行われるが、特に再発した腫瘍に対しては、現時点で有効な治療法がない。手術適応のない症例を対象とした化学療法(CisplatinとPemetrexedの併用療法)の平均的な生存期間は、12か月程度とされている。

胸腔内に投与し、繰り返し投与の安全性と治療効果を検証

ウイルス療法とは、がん細胞のみで増殖するように人工的に改変したウイルスを使う新しいがん治療法。今回の試験では、藤堂教授らが開発した第三世代のがん治療用単純ヘルペスウイルス1型の「(ジーよんじゅうななデルタ)」を用いる。G47Δは、悪性脳腫瘍を対象にして製品化に向けた医師主導治験が実施されており、前立腺がんや嗅神経芽細胞腫の臨床試験にも使われている。

G47Δはこれまで主に腫瘍内に直接投与する方法で使われてきた。悪性胸膜中皮腫は、胸腔内に広く散らばって増える腫瘍であるため、今回初めて、胸腔内投与という方法で実施する。また、G47Δは何回繰り返して投与しても1回毎の治療効果が落ちないという特徴を有するため、膠芽腫(悪性脳腫瘍)の医師主導治験と同様に、今回も、4週間毎に最大6回まで繰り返し投与するという。

G47∆は、2016年には厚生労働省の先駆け審査指定制度の対象品目に選定され、2017年には悪性神経膠腫に対する希少疾病用再生医療等製品に指定。日本初のウイルス療法薬としての製造販売承認が期待されている。今回の臨床試験で、胸腔内への繰り返し投与の安全性と治療効果が確認されれば、悪性胸膜中皮腫のみならず、現在有効な治療法がないがんの胸腔内播種や腹腔内播種の治療にG47Δを応用する可能性につながるとして、今後の研究に期待が寄せられている。

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