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XPJとTTD、FIIH欠損サブユニットの違いが発症疾患を分ける原因解明-名大ほか

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2025年09月25日 AM09:30

TFIIH複合体を構成するタンパク質の異常、2つの異なる疾患を引き起こす機構は未解明

名古屋大学は9月10日、基本転写因子IIH複合体(transcription factor II H:TFIIH)の新たな構造維持メカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科附属神経疾患・腫瘍分子医学研究センター分子遺伝学の中沢由華教授、葉琳大学院生、環境医学研究所発生遺伝分野/難病ゲノム解析センターの岡泰由講師、荻朋男教授らと、Rare Disease UK(英国)の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Investigation(JCI)」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
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希少難治性の遺伝性疾患は、発症原因となる遺伝子の数が多いため疾患の種類も多岐にわたる一方で、個々の患者数が極めて少ないことから、創薬研究や治療法の開発が進みにくく、深刻な社会的課題となっている。

研究グループは、皮膚がんや神経症状を発症する遺伝性難病(指定難病159)である、色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum:XP)の新たな責任遺伝子XPJ/GTF2H4を同定した。XPJは、ヌクレオチド除去DNA修復(NER)に関与するTFIIH複合体(基本転写因子複合体)の構成因子の1つp52タンパク質をコードしている。一方で、TFIIH複合体の別の構成因子p8が欠損した場合には、別の遺伝性希少難病であるトリコチオジストロフィー(TTD)を発症することが知られている。なぜ、同じTFIIH複合体の構成因子の異常であるにも関わらず、それぞれ異なる疾患を発症するのかは不明だった。

XPとTTD患者由来細胞用い、TFIIH複合体形成するp52・p8の機能解析実施

今回の研究では、疾患病態の違いを生む原因を解明するため、p52とp8の機能解析を実施した。GTF2H4/XPJ遺伝子がコードするタンパク質p52の異常によりXPを発症した患者由来細胞(XP140BR)とGTF2H5遺伝子がコードするタンパク質p8の異常によりTTDを発症した患者由来細胞(TTD1BR)を用いてTFIIH複合体の安定性を調査した。その結果、XP140BRでは、TFIIH複合体の構成因子(XPB、p62、XPDなど)が一部分解しているものの、フレームシフト変異を持つアリルに由来するp52タンパク質(p52ΔC)が低量ながら発現していること、さらに、このp52ΔCがTFIIF複合体をわずかに形成していることが明らかとなった。一方、TTD1BRでは、FTIIH複合体全体が不安定化しており、TFIIH複合体はほとんど形成されていないことが示された。

p8欠損で重篤なTTD発症もp52のC末欠損で一部回復

さらに、XP140BRで形成されるp52ΔCによるTFIIH複合体には、p8が含まれていないことが示された。つまり、p8がないと、TFIIH複合体が安定に形成されず、重篤なTTD(乳幼児期に死亡)を発症するが、p52のC末が欠損している場合には、p8を含まないTFIIH複合体が形成され、XP(遮光により青年期まで成長可能)となることが示唆された。

不安定なp52C末にp8結合で複合体形成可能となるメカニズム発見

次に、p52のC末の機能について解析したところ、1)p52のC末は構造上、特定の位置に留まらない(本体に対してC末側が動く)こと、2)p52単体の場合このC末の位置どりが悪く、C末そのものがTFIIH複合体形成の邪魔をすること、3)p8がC末部分に結合することでp52を適切な形状に保つことができ、円滑なTFIIH複合体形成を促すことが示された。そこで、アンチセンスオリゴ(ASO)を用いて、TTD患者のp52のC末を欠損させることで、p8がなくともTFIIH複合体の形成を促進できるのではないかと考えた。

ASOにより、TTD患者由来細胞のp52ΔC発現上昇・複合体形成回復

そこで、C末が欠落したp52(p52ΔC)を作り出すASOを設計し、TTD1BR細胞に作用させたところ、予想通り、p52ΔCの発現が上昇するとともに、TFIIH複合体構成因子のXPBの発現が回復し、TFIIH複合体形成が促されることが確認された。

解析の継続により、XPやTTDの発症メカニズム理解や創薬・治療法開発に貢献すると期待

今回の研究の成果は、NERメカニズムとTFIIH複合体の形成に関わる新たなモデルを提示したが、XPおよびTTDの病態を分ける原因を完全に説明するには至っていない。また、ASOの緩和効果についても、細胞レベルの検討に留まっている。「引き続き、各NER関連因子の機能解析や疾患モデル生物を活用した病態解析を実施することで、NER機構の詳細を解明し、XPやTTDの発症メカニズムの理解を進めるとともに、各疾患の創薬・治療法開発にも貢献していきたいと考えている」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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