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妊娠中の向精神薬3剤以上併用で新生児のNICU等リスク上昇-北里大

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2025年09月10日 AM09:30

非オピオイド系向精神薬の多剤内服による新生児への影響は?

北里大学は9月2日、妊娠中の非オピオイド系向精神薬3剤以上の併用でNICU入室・人工呼吸管理・新生児離脱症候群(NAS)が有意に増加し、特にCYP2D6阻害作用をもつ薬剤の併用で悪化が顕著であることが判明したと発表した。この研究は、同大医学部産婦人科産科学の五十畑仁志助教・落合大吾主任教授、精神科学の三浦純江助教・稲田健主任教授、新世紀医療開発センター先端医療領域開発部門新生児集中治療学の中西秀彦教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

周産期の精神疾患は妊婦の約2割にみられ、薬物療法は母体・小児双方が健康な妊娠経過を過ごすために必要となることが少なくない。一方、複数の向精神薬を併用する患者が増える中、オピオイドを含まない向精神薬の多剤内服が新生児転帰へ及ぼす影響は十分に検証されていなかった。

向精神薬3剤以上の併用で新生児リスク上昇、CYP2D6阻害薬を含む併用に注意が必要

今回の研究では、2019~2023年に北里大学病院で分娩した妊婦を対象に、妊娠中の非オピオイド系向精神薬の併用が正期産新生児の短期予後に与える影響を検討した。結果、非オピオイド系向精神薬3剤以上の併用は、新生児リスクが有意に上昇し、無投薬と比べ、NICU入室29%(無投薬14%)、人工呼吸器管理12%(同2.3%)、NAS12%(同0%)と増加した。一方、非オピオイド系向精神薬1~2剤の併用では悪化は認められず、無投薬群と比べ有意差はなかった。

また、CYP2D6阻害薬を含む併用は、CYP2D6阻害薬なしと比べ、NICU入室30%(CYP2D6阻害薬なし6.7%)、人工呼吸器管理17%(同0%)、NAS15%(同2.2%)と増加した。

今回の研究結果は、3剤以上の非オピオイド系向精神薬の併用やCYP2D6阻害薬を含む場合には、出生直後の観察を強化するなど、産婦人科・精神科・新生児科の連携がより重要となることを示唆している。一方で、1~2剤の併用では無投薬群との有意差が認められなかったことから、精神症状コントロールに必要な場合には使用可能であると考えられる。

非オピオイド系向精神薬併用の最適化、周産期チーム医療を後押しするエビデンスに

今回の成果は、周産期メンタルヘルスと新生児安全の両立に向け、非オピオイド系向精神薬併用の最適化と周産期チーム医療を後押しするエビデンスとなることが期待される。

「妊婦の精神症状コントロールは重要で、薬物療法を一律に否定することはできない。今回の成果は、非オピオイド系向精神薬3剤以上併用時の新生児観察強化のエビデンスとして、ガイドラインや院内プロトコル確立に活用されることが望まれる。また、「妊産婦メンタルヘルスに関する課題を有する妊産婦が受診できる産科・精神科医療機関が不足している」「産科・精神科・行政の連携が難しい」といった課題解決の一助となることも期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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