全自動型AED、2021年日本導入も普及は限定的
岡山大学は8月22日、AED(自動体外式除細動器)について、「半自動型」「全自動型」の使いやすさ比較調査を国内で初めて実施したことを発表した。この研究は、同大学術研究院医歯薬学域(医)地域二次救急・災害医療推進講座の野島剛講師(特任)と同学域救命救急・災害医学の中尾篤典教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Internal Medicine」に掲載されている。

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心停止の際に必要な早期除細動は、生存率向上のために極めて重要である。しかし、日本での院外心停止におけるAED使用率は約10%にとどまっている。AEDには、救助者がボタンを押す「半自動型」と、機械が自動でショックを行う「全自動型」があり、全自動型は2021年に日本で導入されたばかりで普及は限定的である。これまで両タイプの使いやすさや心理的負担を比較した調査は行われていなかった。
一般市民は全自動型AEDを好み、医療従事者は半自動型AEDを選ぶ傾向
研究グループは、2021~2022年に心肺蘇生講習を受けた443人(医療従事者47人、一般市民396人)を対象に、半自動型と全自動型AEDの比較調査を実施した。その結果、一般市民は全自動型を好み、ボタンを押すためらいが減る傾向が見られた。一方、医療従事者は、使い慣れた「半自動型」を選ぶ傾向があり、「全自動型」は危険と感じる声もあった。両群とも全自動型に好意的な意見を持つ一方、現行の講習では全自動型の教育がほとんど行われていない実態が明らかになった。
市民講習での教育内容改善が必要
全自動型AEDは、救助者の心理的負担を軽減し、ためらいによる除細動遅延を防ぐ可能性がある。特に一般市民にとっては、迅速な除細動を可能にし、救命率向上に寄与することが期待される。「今回の研究は、日本における全自動型AEDの普及促進と、市民講習での教育内容改善の必要性を示し、誰もが迷わずAEDを使える社会の実現に貢献するものである」と、研究グループは述べている。
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