小中高生向け簡易型食事歴法調査票「BDHQ15y」
東京大学は8月21日、小中高生の習慣的な栄養素・食品摂取量を簡便かつ定量的に評価するために開発された「簡易型食事歴法質問票:brief-type diet history questionnaire for Japanese children and adolescents(BDHQ15y)」の妥当性を全国規模で初めて検証したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科栄養疫学・行動栄養学(社会連携講座)の大久保公美特任教授、田島諒子特任助教、社会予防疫学分野の村上健太郎教授、篠崎奈々助教、佐々木敏東京大学名誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「British Journal of Nutrition」に掲載されている。

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食事内容を正確に把握することは、健康への影響を理解し、病気を予防するうえで重要である。特に、成長と発達が著しい小・中・高校生の時期は、生涯にわたる健康の基礎を形成する重要な時期であり、この時期の食生活は将来の健康に大きく影響すると考えられている。しかし、この年代は食習慣の変動が大きく、摂取した食品や量を正しく思い出して申告することには限界があるため、食事の正確な把握が困難とされている。
日本では、小中高生向けに過去1か月間の食習慣を定量的に把握するために簡易型食事歴法調査票(BDHQ15y)が開発されている。しかし、全国規模かつ幅広い年齢層を対象とした正確性の検証は十分に行われていなかった。
全国32都道府県の小中高生844人対象、BDHQ15yの正確性を検証
そこで今回の研究では、BDHQ15yが実際の食事内容をどの程度正確に反映しているかを検証した。同研究は、全国32都道府県に居住する6〜17歳の小中高生844人を対象に実施。まずBDHQ15yに回答してもらい、その後、各季節に2日ずつ、計8日間の半秤量式食事記録調査を行った。得られたデータをもとに、44の栄養素および31の食品群について、BDHQ15yと食事記録から推定された摂取量の中央値を比較した。
男女とも19栄養素で食事記録との摂取量の差が10%未満と、良好に一致
その結果、BDHQ15yは男女ともに19の栄養素で、食事記録との摂取量の差が10%未満と小さく、良好な一致を示した。食品群では、男子で11種、女子で7種が同様の基準を満たし、タンパク質、脂質、炭水化物、食物繊維、穀類、野菜、乳製品、加糖飲料などの主要な栄養素および食品群を概ね正確に把握できることが明らかとなった。一方、多くの栄養素と食品群において摂取量が多くなる場合には、BDHQ15yが過大に推定する傾向が見られた。
個人単位での摂取量評価には慎重な解釈が必要
また、個人ごとの推定値にはばらつきがあり、個人単位での摂取量の評価には慎重な解釈が必要なことが示された。さらに、摂取量の”多い・少ない”を順位付けする能力については、スピアマンの順位相関係数の中央値が、栄養素で男子0.33、女子0.28、食品群で男子0.36、女子0.29とやや低めではあるものの、一定の妥当性が確認された。
主要栄養素や摂取状況、集団レベルでの把握基盤整備に期待
同研究は、成長期の学童・思春期の子どもの食習慣を簡便かつ効率的に把握できるBDHQ15yの妥当性を科学的に裏付けた。これにより、全国規模の食事調査や学校・地域の健康施策のモニタリングにおいて、主要な栄養素や食品群の摂取状況を集団レベルで正確に把握する基盤が整備されることが期待される。こうしたツールの活用は、子どもの栄養状態の継続的な評価・改善、科学的根拠に基づく食育の推進、将来的な健康格差の予防に寄与すると考えられる。一方で、個人ごとの詳細な評価には限界があるため、今後は精度向上に向けた改良を進める予定である、と研究グループは述べている。
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