尿路感染症、グラム染色による原因菌判定には専門知識が必要だった
神戸大学は7月18日、AIでグラム染色画像を解析し、尿路感染症に関連する原因菌を専門医療職と同等の精度で識別できる細菌感染症菌種推定支援ソフトウェア「BiTTE-Urine(ビッテ・ユリン)」を開発したと発表した。この研究は、同大都市安全研究センターの研究グループと、カーブジェン株式会社、国立国際医療研究センター(現・国立健康危機管理研究機構)との共同研究によるもの。研究成果は、「Journal of Medical Microbiology」に掲載されている。
尿路感染症は日常診療で頻繁に遭遇する疾患であり、迅速かつ正確な病原体の判定が治療効果に直結する。従来、グラム染色所見の読み取りには専門的な知識が必要とされ、診断の一貫性や精度の確保が課題となっていた。
そこで今回の研究では、AIを活用し、スマートフォンで撮影したグラム染色画像を解析する診断支援ソフトウェア「BiTTE-Urine」を共同で開発した。
BiTTE-Urineの正解率は専門医療職と同等、グラム陰性桿菌などで特に高精度
国際感染症センターおよび神戸大学医学部附属病院で収集した306枚のグラム染色画像を用いて、BiTTE-Urineの性能を評価した。判定対象は、グラム陽性球菌、グラム陽性桿菌、グラム陰性球菌、グラム陰性桿菌、酵母様真菌、複数菌、菌体なしの7種とした。
AI(BiTTE-Urine)と20人(各施設10人)の細菌感染症専門医療職の識別精度を比較する非劣性試験を実施したところ、AIは正解率87.9%、専門医療職は正解率83.0%で、統計的にAIの非劣性が証明された。特に、グラム陰性桿菌や酵母様真菌の分類でAIは高い精度を発揮した。
AIによる診断支援、尿路感染症以外の領域への応用にも期待
グラム染色は尿路感染症の診断に有用な検査で、検査当日に迅速に結果が得られ、初期抗菌薬の選択や治療方針の決定を行うことができる。しかし、検査所見の判読は専門性が高く習熟を要するため、グラム染色による塗抹検査を実施できる施設は限られていた。
今回開発したBiTTE-Urineは、専門医療職不在の施設、夜間帯などでも高精度なAI診断支援を実現し、抗菌薬の適正使用や医療リソースの効率化に貢献する可能性がある。「今後は、尿路感染症以外の領域にも応用を広げ、さらなる精度向上と社会実装を目指して開発を進めていく」と、研究グループは述べている。
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・神戸大学 プレスリリース


