センサー搭載のマスクが呼気から慢性腎臓病を検出
特殊な呼気センサーを搭載した改良型医療用マスクにより、マスク着用者が慢性腎臓病(CKD)であるか否かを正確に判定できる可能性があるようだ。研究では、アンモニアやエタノールなどのCKDに関連する代謝物を検知するセンサー搭載のこのマスクにより、CKD患者と非CKD患者を正確に区別できたという。ローマ・トル・ヴェルガータ大学(イタリア)のAnnalisa Noce氏らによるこの研究の詳細は、「ACS Sensors」に5月7日掲載された。

画像提供HealthDay
米国でのCKD患者数はおよそ3500万人と推定されているが、CKDに気が付いていない潜在的な患者も含めると、それ以上に上るとみられている。腎臓は、血液を濾過して余分な水分や老廃物を尿として排泄する役割を担っている。しかし、腎機能が低下すると、老廃物が十分に排出されずに体内に蓄積する。
CKDは主に尿検査と血液検査により診断されるが、研究グループは、CKD患者の呼気中にアンモニアなどのCKDに関連する化学物質が含まれていることに着目し、アンモニアとその他のCKD関連代謝物を同時に検出できる特殊なセンサーの開発を試みた。
まず、揮発性化合物に敏感な分子であるポルフィリンで修飾した導電性ポリマーで銀製の電極をコーティングし、感度を高めた。次に、このコーティングされた電極を使い捨ての医療用マスクの層の間に配置し、ワイヤーでデバイスと電子読み取り装置を接続した。これにより、マスク着用者の呼気に含まれる特定のガスがポリマーと反応した際に生じる電気抵抗の変化を検出できるようにした。初期実験では、アンモニア、エタノール、プロパノール、アセトンなどのCKD関連代謝物に対するこのセンサーの高い感度が確認された。
このセンサー搭載マスクの性能を、18〜80歳の101人(CKD患者53人、健常者48人)を対象に評価した。CKD患者のステージは2〜5だった。その結果、このマスクのCKDに対する真陽性率(CKD患者を正しくCKDと判定した割合)は93.3%、真陰性率(非CKD患者を正しくCKDではないと判定した割合)は86.7%であることが示された。また、センサーにより測定された結果がCKDのステージの推定にも有用な可能性も示唆された。
研究グループは、これらの結果は、このセンサー搭載マスクがCKD患者に対する簡単で非侵襲的かつ費用対効果の高いモニタリング方法になり得ることを示していると述べている。Noce氏と論文の共著者であるローマ・トル・ヴェルガータ大学のSergio Bernardini氏は、「この技術の導入により、CKDの進行の変化をタイムリーに特定しやすくなり、疾患管理の向上が期待される」と話している。
▼外部リンク
・Disposable Sensor Array Embedded in Facemasks for the Identification of Chronic Kidney Disease

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