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頸椎症性神経根症、NSAIDs+ミロガバリンで鎮痛効果-科学大ほか

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2025年05月16日 AM09:00

CSR、痛みの慢性化でNSAIDsでは十分な効果が得られないことも

東京科学大学は5月1日、(CSR)による神経障害性疼痛を有する患者に対し、非ステロイド性消炎鎮痛剤()による既存治療を継続する群と、NSAIDsにミロガバリンベシル酸塩()を追加して併用投与する群の2群で、142人を対象とした12週間の比較研究を実施した結果を発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科整形外科学分野脊椎脊髄診療班の平井高志准教授および吉井俊貴教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Pain and Therapy」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

CSRは、退行性変化や椎間板ヘルニアにより脊柱管が狭窄し、神経根が圧迫されることで発症する頸椎症である。CSR患者は、頸部痛や強い片側性の放散痛を伴うことが多く、その結果、生活の質(QoL)が低下し、日常生活動作(ADL)にも支障をきたす。CSRの治療には薬物による保存療法から手術療法まで幅広い選択肢があるが、臨床現場では一般的に保存的治療が優先される。早期に症状が改善する例も少なくないが、痛みが慢性化すると保存的治療では十分な効果が得られにくいことが知られている。CSRの症状は、神経根の圧迫によって生じるため、痛みには侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の両方が関与していると考えられている。国内における薬物治療では、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)が第一選択薬として広く使用されているが、痛みが残存するケースも多く、その場合は神経障害性疼痛が背景にあると推察される。

ミロガバリンは、神経障害性疼痛治療薬として承認され、現在は臨床でも使用されているが、CSR患者に対するその有効性と安全性を検討した研究はこれまで報告されていない。

標準的な薬物療法NSAIDs+ミロガバリン、無作為化比較試験で検討

そこで今回の研究では、CSRに起因した神経障害性疼痛に対し、ミロガバリンとNSAIDsの併用療法がNSAIDs単独療法と比較して、どの程度有効かつ安全であるかを検討することを目的とした。今回の研究は、日本国内35施設で実施された多施設共同・無作為化・非盲検・並行群間比較介入試験。2022年3月~2024年4月にかけて行われた。選択基準を満たし、除外基準に該当しない143人の患者から文書による同意を取得した上で、(NSAIDs)による単独治療群(単独群)と、ミロガバリンを追加併用する治療群(併用群)に、1:1の割合で無作為に割り付けた。

単独群との比較で、ミロガバリン併用群で有意な改善

主要評価項目は上肢痛のNRS(Numerical Rating Scale)。12週目における投与開始時からの推定変化量は、併用群で-2.63(95%信頼区間:-3.14~-2.11;P<0.001)、単独群で-1.07(95%信頼区間:-1.62~-0.53;P<0.001)だった。両群間の差は-1.55(95%信頼区間:-2.31~-0.80;P<0.001)であり、併用群において有意な改善が認められた。また、4週目および8週目においても、同様に有意差が確認された。

12週目の上肢痛NRSにおけるレスポンダー率(投与開始時と比較して30%以上または50%以上の改善が認められた割合)は、併用群が単独群よりも有意に高い結果となった。30%以上の改善は併用群で71.7%、単独群で39.6%、50%以上の改善は併用群で58.3%、単独群で22.6%だった。

さらに、全般的な改善度を示すPGIC(Patient Global Impression of Change)スコアにおいても、併用群の方が高い改善率を示した。「かなり改善した」以上に該当するPGICスコア≦2の割合は併用群で65.0%、単独群で33.3%、また「軽微な改善」以上に該当するスコア≦3の割合は併用群で90.0%、単独群で55.6%であり、いずれも併用群で有意に高い結果となった。

副作用の発現率は併用群で38.9%に認められ、主な副作用は傾眠(23.6%)および浮動性めまい(13.9%)であった。これらの多くは軽度であり、新たな副作用は確認されなかった。

他疾患「」関与ケースでも、ミロガバリン有効性に期待

今回の研究は、CSRに対するミロガバリンとNSAIDsの併用治療を前向き無作為化デザインで評価した初の臨床研究であり、その成果は高い科学的意義を有すると考えられる。現在、NSAIDs単独治療が標準的な薬物療法として用いられているが、同研究の結果からは、ミロガバリンを追加併用することにより、有意な鎮痛効果が得られることが明らかになった。今回の研究成果は、従来の治療では十分に改善が見られなかったCSR患者に対し、新たな治療戦略を提示するものとなり、今後の臨床現場における治療選択肢の拡大に貢献することが期待される。今後、脊椎領域の他の疾患においても、神経障害性疼痛が関与するケースでは、ミロガバリンの有効性が期待される。これにより、さらなる疾患群に対しても新たな治療戦略を提案できる可能性がある、と研究グループは述べている。

 

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