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大腸カプセル内視鏡、日本人でも大腸腫瘍検出や炎症部位確認に有用-藤田医科大

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2025年05月08日 AM09:10

体格や腸管洗浄剤の種類が異なる日本での、大腸カプセル内視鏡の大規模研究はなかった

藤田医科大学は4月23日、大腸カプセル内視鏡の有効性・安全性・受容性に関する全国多施設共同前向き研究の解析結果を発表した。この研究は、同大医学部先端光学診療学の大宮直木教授と堀田直樹客員准教授らの研究グループ(ColoCam-J studyグループ)によるもの。研究成果は、「Gastrointestinal Endoscopy」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

従来の大腸検査である大腸内視鏡や注腸造影、大腸CTが全て、肛門から器具を挿入する検査だったのに対し、大腸カプセル内視鏡は、大きさ32.3mm×11.6mm、重さ2.9gの両端にカメラがついたカプセル内視鏡で、飲み込むだけで検査ができるのが特徴だ。

海外ではさまざまな腸管洗浄法での大腸カプセル内視鏡の成績が報告されているが、体格や腸管洗浄剤の種類が異なる日本での大規模な研究は、これまで施行されていなかった。

大腸カプセル内視鏡を施行した1,006人の患者のうち、大腸全体を観察できたのは86.1%

研究グループは今回、海外を含め最大数の患者を対象にし、大腸カプセル内視鏡の有効かつ安全な実施方法、有害事象や被験者の受容性を明らかにすることを目的とした。まず、全国44施設で大腸カプセル内視鏡を施行した1,006人の患者の臨床データ、カプセル内視鏡所見、その後に施行した大腸内視鏡の所見を前向きに収集し、オンラインで浜松医科大学臨床研究管理センターのサーバーに保存し、解析した。

その結果、大腸全体を観察できたのは86.1%で、多変量解析で有意な全大腸観察成否の因子は(63歳未満、)、「前日の腸管洗浄剤あり/当日の腸管洗浄剤1.8L以上/ブースター用ヒマシ油30mL以上内服」であることが証明された。

腫瘍発見感度はポリープの大きさが6mm以上で92%、10mm以上で89%

さらに、内視鏡的洗浄度は適切が66.5%。多変量解析で有意な因子は慢性便秘症、前日の腸管洗浄剤あり、前日の下剤あり、当日の腸管洗浄剤1.8L以上であることを証明。大腸内視鏡所見をゴールドスタンダードとした場合の被験者の大腸ポリープ・腫瘍の大腸カプセル内視鏡の感度は6mm以上で92%、10mm以上で89%であり、多変量解析で有意な因子は上行結腸の不適切な洗浄度、横行結腸の6mm以上のポリープ・腫瘍、左側結腸の6mm以上のポリープ・腫瘍であることが証明された。

大腸カプセル内視鏡で大腸全体を観察できた割合86.1%、腸内の洗浄度が「適切」と評価された割合66.5%、大腸ポリープや腫瘍を発見する感度(大腸内視鏡と比較)は、ポリープの大きさが6mm以上の場合92%、10mm以上の場合89%、有害事象はカプセルの滞留が2例(0.2%)あった。以上の結果から、大腸カプセル内視鏡が比較的高い精度と安全性を持つことが示された。

次回も大腸カプセル内視鏡を希望した人の割合は63%

有害事象は滞留が2例(0.2%:クローン病にて内視鏡的バルーン拡張術後回収、S状結腸進行がんで外科切除)あったことを報告。次回の大腸検査として大腸カプセル内視鏡の希望者の割合は63%だった。

適切に大腸カプセル内視鏡を用いることで、大腸検査の受診率向上に貢献する可能性

今回の研究により、腸管洗浄が適切に行われれば、大腸カプセル内視鏡は大腸腫瘍・ポリープの検出や潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患における重症度や炎症部位の確認に有用であることが示された。また、日本人における大腸カプセル内視鏡の標準仕様のデータを提供した。「今後、適切に大腸カプセル内視鏡を用いることで、大腸検査の受診率向上に貢献することが期待される」と、研究グループは述べている。

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