睡眠時間と月経痛の重症度が関連する報告はあるが、睡眠の質は関係する?
広島大学は4月23日、国内女子学生を対象に、睡眠の質と月経周辺期症状の重症度の関連を調査した結果、これらの間には関連があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科総合健康科学の小田さくら氏、前田慶明氏、田城翼氏、水田良実氏、有馬知志氏、浦邉幸夫氏、新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所の小宮諒氏、和洋女子大学家政学部健康栄養学科の永澤貴昭氏、名古屋女子大学医療科学部理学療法学科の内藤紘一氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMJ Open」に掲載されている。

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月経の前後にあらわれる下腹部痛やイライラなどの多様な症状のことを月経周辺期症状と呼び、女性の約9割が経験するといわれている。これらは、単なる身体的・精神的な苦痛だけでなく、例えば学生であれば授業を欠席せざるを得なくなり学業成績が低下するなど、社会的な影響も受けることから、女性にとって重大な健康問題である。
月経周辺期症状の軽減策の一つとして、生活習慣の見直しは一定の効果があるとされている。その中でも、睡眠時間が短い者は月経痛の重症度が高いことがこれまでの研究でわかっており、十分な睡眠をとることが月経周辺期症状の改善に寄与すると考えられている。しかし、月経周辺期症状と睡眠の関係を十分に検討するには、単なる睡眠時間の長さだけでなく、睡眠の質にも着目する必要があると考えられる。しかし、睡眠の質と月経周辺期症状の重症度の関係を調査した研究は不足している。
国内女子学生850人対象、睡眠の質と月経周辺期症状の重症度の関係を調査
そこで今回の研究では、月経周辺期症状の軽減策を提案するための基礎的なデータを提供することを目的とし、国内女子学生を対象に睡眠の質と月経周辺期症状の重症度の関係を調査した。同研究では、国内の18~25歳の女子学生850人を対象にGoogle formsを用いたオンラインアンケート調査を実施した。アンケートの主な調査項目は、ピッツバーグ睡眠質問票とMenstrual Distress Questionnaire(MDQ)とした。ピッツバーグ睡眠質問票とは、入眠までの時間や夜中に覚醒する頻度など、7つの項目を0~3点で採点し、その合計点で総合的な睡眠の質を評価する質問票である。一方MDQとは、多様な月経周辺期症状を「痛み」「水分貯留」「自律神経」「否定的感情」「集中力」「行動変容」の下位尺度に分類し、それぞれを0~4点で採点する質問票である。
ピッツバーグ睡眠質問票の回答結果をもとに、対象を睡眠の質正常群と低下群の2群に分類し、MDQの得点を月経前・月経中・月経後の3時期で比較することで、睡眠の質と月経周辺期症状重症度の関連を確認した。またその後、多様な月経周辺期症状の中でも特にどの症状が睡眠の質と関連が強いのかを検証した。850人にアンケートを配布し、366人から回答が得られた。その後、ホルモン調整剤を服用している者や婦人科系および精神系疾患の既往がある者など除外基準に該当する者を除外した298人のうち、160人が睡眠の質正常群に、138人が睡眠の質低下群に分類された。
女子学生の睡眠の質と月経周辺期症状に関連あり、特に「集中力」「痛み」
睡眠の質正常群と睡眠の質低下群でMDQの得点を比較した結果、月経前・月経中・月経後のすべての時期において、睡眠の質低下群ではMDQの得点が高く、月経周辺期症状の重症度が高いことを示した。また、月経周辺期症状の中でも月経前・月経後の「集中力」と月経中の「痛み」が特に睡眠の質と関連していることがわかった。以上のことから、国内女子学生の睡眠の質と月経周辺期症状の間には関連が見られ、特に月経前・月経後の「集中力」や月経中の「痛み」といった症状との関連が明らかとなった。
今後、介入研究で睡眠の質と月経周辺期症状の因果関係を探索
今回の研究は、睡眠の質と月経周辺期症状が関連することを示した。また、多様な月経周辺期症状の中でもどの症状が睡眠の質と関連が強いかどうかを検証することで、より詳細に睡眠の質と月経周辺期症状の関係に関する知見を提供できたとしている。今回得られた知見を基に、今後は介入研究により睡眠の質と月経周辺期症状の因果関係を探っていくなど、月経周辺期症状を軽減させるための貴重な研究成果を発信できるよう今後も研究活動を進めていく、と研究グループは述べている。
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・広島大学 プレスリリース