硫酸化ヘミセルロースOJI-204の効能は?乾燥肌マウスで
順天堂大学は4月7日、木質資源由来の硫酸化ヘミセルロース(開発コード:OJI-204)が乾燥肌の改善と自発的・機械的かゆみを改善することを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科環境医学研究所・順天堂かゆみ研究センターの外山扇雅特任助教、髙森建二特任教授ら、王子ホールディングス株式会社のグループ会社である王子ファーマ株式会社との共同研究グループによるもの。研究成果は、「Biomedicines」に掲載されている。

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ヘパリン類似物質は保湿作用や血液循環促進作用、抗炎症作用、血液凝固阻止作用があり、さまざまな疾患の治療に使われる。ヘパリン類似物質は、ブタやウシなどの家畜から作られているが、人畜共通感染症のリスク低減、環境負荷の低減、トレーサビリティ向上などの理由から、今後は植物由来原料が動物由来原料に代わると予想されている。王子ファーマでは製紙の知見を生かしながら、製薬に木質資源を役立てる研究・開発を行っている。木材の成分比率は、約50%がセルロース、約25%がヘミセルロースである。セルロースは、紙や繊維の原材料として、広く活用されてきたが、ヘミセルロースは工場のボイラーで燃料として燃やされるだけであった。王子ファーマはヘミセルロースの可能性に着目し、未来へ向けた医薬品開発を進めており、その過程でOJI-204の合成に成功した。ヘパリン類似物質と同様に、ペントサンポリ硫酸ナトリウムを含む硫酸化ヘミセルロースは硫酸化多糖類ファミリーに属する化合物であり、抗凝固作用と抗炎症作用を示すことが報告されている。
そこで今回の研究では、乾燥肌モデルマウスを用いて、硫酸化ヘミセルロース(開発コード:OJI-204)の皮膚バリア機能およびかゆみに対する効能を調べた。アセトン-エーテル混合溶液と水を1日2回、7日間にわたって反復塗布(AEW処置)することにより乾燥肌モデルを作製。この時、溶媒および0.3%ヘパリン類似物質、3%および10%OJI-204を1日2回塗布した。皮膚の乾燥度合いを経時的に記録し、AEW処置前日および4日目、7日目に皮膚バリア機能の指標である経皮水分蒸散量(TEWL)と角層水分量(SC Hydration)を測定した。また、AEW処置前日および7日目に自発的かゆみ行動を、8日目に機械的かゆみ過敏度合いを測定した。
OJI-204、乾燥肌マウスの自発的・機械的かゆみ軽減
その結果、溶媒群は皮膚の乾燥度合いが経時的に高くなるのに対し、0.3%ヘパリン類似物質(陽性コントロール群)、3%および10%OJI-204群は有意に乾燥度合いが軽減し、溶媒群と比較してTEWLも有意に低下した。さらに3%OJI-204群は溶媒群と比較して有意に自発的かゆみ行動を抑制した。また、OJI-204群は溶媒群と比較して有意に機械的かゆみ過敏も抑制した。以上の結果より、OJI-204は乾燥肌において保湿効果を示し、自発的・機械的かゆみを改善することが明らかとなり、ヘパリン類似物質の代替となり得ることが示唆された。
現在の主流・豚由来ヘパリン類似物質の代替として期待
今回研究グループは、アトピー性皮膚炎などの病態形成に重要な乾燥肌のモデルマウスにおいて、OJI-204がヘパリン類似物質と同等もしくはそれ以上に保湿効果があることを発見したとともに、自発的かゆみおよび機械的かゆみ過敏の抑制効果があることを明らかにした。これまでの研究から、保湿によって乾燥肌のかゆみを含めた症状を改善できることがわかっており、今回もOJI-204の保湿効果によってかゆみを抑制できたと考えられる。同結果は、これまで燃料として燃やされる以外に用途がなかった物質を医薬品へと役立てることができることに加え、木質由来であることからウイルス感染リスクの低減や宗教的な使用制限に対する配慮が可能となり、現在の主流である豚由来のヘパリン類似物質の代替として広く使用されることが期待され、SDGs達成への一歩と繋がる、と研究グループは述べている。
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・順天堂大学 プレスリリース