AD有病率抑制により効果的な乳児ケア方法は?単施設で検証
千葉大学は1月22日、低刺激な洗浄方法と保湿ケアにより、寒い時期(1月~3月)に生まれた乳児のアトピー性皮膚炎(AD)の発症を予防できる可能性を、同大医学部附属病院で生まれた新生児を対象とした調査で明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部附属病院アレルギーセンターの下条直樹客員教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Archives of Allergy and Immunology」に Brief Reportとして掲載されている。

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ADは、日本人の乳児の約2割がかかるといわれており、特に秋・冬生まれはADになりやすいとされている。今回の研究では、2019年1月~9月生まれの子どもの母親へは従来のスキンケア方法(対照群;132人)を、2020年1月~9月生まれの子どもの母親へは新しいスキンケア方法(介入群;140人)を指導し、生後12か月時のAD有病率についてアンケート調査を行った。
「泡ソープで洗う」「全身に保湿剤を塗る」などを介入群に指導
従来のスキンケア方法(対照群)は、「石鹸を使って手やガーゼで乳児の体を洗う(お風呂の中)」「ぬるま湯でガーゼを使って乳児の顔を洗う」「洗面器に張ったぬるま湯をかける」とし、保湿ケアは指導なし、という条件だった。
一方、新しいスキンケア方法(介入群)は、「泡ソープを使って手で乳児の体を洗う(お風呂の外)」「泡ソープを使って手で乳児の顔を洗う」「シャワーで泡を完全に洗い流す」とし、保湿ケアは「FTU(フィンガーチップユニット)プロトコルに従い、全身に保湿剤を1日1回塗る」ように指導された。FTUは指の先から第一関節までノズル直径5㎜のチューブから絞り出した量が、両手のひらに塗る量に相当するという塗り方を指す。
1月~3月生まれの子どものAD有病率、介入群2.9%、対照群21.2%
参加者全員を評価した生後12か月時のAD有病率については、両群間で大きな差は確認されなかった。しかし、出生季節別の解析において、1月~3月生まれの子どもでは、生後12か月時のAD有病率が、対照群(21.2%)より介入群(2.9%)の方が有意に低いことがわかった(t検定を実施、P<0.05)。
「研究結果は、乾燥した寒い時期に生まれた子どもについては、低刺激な洗浄と保湿によるスキンケアにより、ADを予防できる可能があることを示している。やさしい洗浄・しっかりとした洗い流し・保湿ケアの組み合わせで乳児の肌を守ってほしい」と、研究グループは述べている。
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