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日本人母乳中ヒトミルクオリゴ糖濃度、子の頭囲成長・精神神経発達と関連-阪大ほか

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2025年02月05日 AM09:00

HMOsと精神神経発達の関連、日本人対象研究はなかった

大阪大学は1月27日、8種の母乳中ヒトミルクオリゴ糖(以下、HMOs)濃度の測定法を開発し、母乳中HMOs含量を評価した結果を発表した。この研究は、同大生物工学国際交流センターの藤山和仁教授らの研究グループは、株式会社明治、明治ホールディングス株式会社、東北大学東北メディカル・メガバンク機構の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Food Science」に掲載されている。

HMOsは、母乳に多く存在する難消化性オリゴ糖であり、子の腸内環境を整える栄養素であることが知られている。海外における複数の研究では、子の精神神経発達にも関連する成分であることが示されていたが、これまでに日本人を対象とした研究はなかった。HMOsにはさまざまな種類があり、評価対象とするHMOsにあわせて測定法を確立する必要がある。これまで、個々のHMOsに適応した測定法は開発されていなかった。

8種HMOs測定法を開発、・母乳中HMOs濃度と子の精神神経発達指数などを評価

今回の研究では、8種の母乳中HMOsの測定法を開発し、日本人母乳中のHMOs濃度と子の頭囲の成長、および精神神経発達指数との関連を評価した。まず、東北大学東北メディカル・メガバンク機構の三世代コホート調査に参加した母乳栄養児とその母親150組を無作為に抽出。母乳栄養児は出生から6か月以上の間、母乳のみで育てられた乳児を指す。母乳中のHMOs8種(2′-フコシルラクトース[2′-FL]、3′-フコシルラクトース、3′-シアリルラクトース[3′-SL]、6′-シアリルラクトース、ラクトシアリルテトラサッカライドa、ラクトシアリルテトラサッカライドb、ラクトシアリルテトラサッカライドc、ジシアリルラクトNテトラオース[DSLNT])について、高速液体クロマトグラフィー/質量分析により定量する測定法を開発。母乳栄養児の母親から産後1か月に採取された母乳中の各HMOsの濃度を測定した。さらに、これらの成分について、母乳栄養児の生後1か月、5か月、9か月までの頭囲の成長と、生後6か月、1歳、2歳の各時点での精神神経発達指数との関連を多変量解析により評価した。

2′-FL、子の頭囲の成長・精神神経発達指数と正に相関

その結果、8種のHMOsについて日本人母乳における濃度分布の実態(2′-FL、0-4.74 mg/mL; 3′-FL、0.02-1.52 mg/mL; 3′-SL、0.07-0.32 mg/mL; 6′-SL、0.01-0.70 mg/mL; LSTa、0.002-0.043 mg/mL; LSTb、0.02-0.31 mg/mL; LSTc、0.001-0.47 mg/mL; DSLNT、0.09-0.71 mg/mL[最小値-最大値、全解析対象者において])が明らかになった。あわせて、一部のHMOsでは、子の頭囲の成長や精神神経発達指数との間に正の相関が観察された。具体的には、8種のHMOsのうち、2′-FLに「子の頭囲の成長(出生から生後5か月)」、および「精神神経発達指数(24か月微細運動)」との正の相関があることがわかった。また、2′-FL分泌型の母乳を持つ母親の解析対象者では、3′-SLが「12か月時点の粗大運動発達指数」、DSLNTが「12か月時点の微細運動発達指数」と正の相関を持つことが確認された。

今回の研究成果は、乳幼児の健全な成長と発達における母乳中成分の役割を解明する重要な知見となる。この知見が、乳幼児の健やかな成長へ貢献することが期待される、と研究グループは述べている。

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