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「抗精神病薬による体重増加」に関わる薬剤・併用薬・背景を同定-北大病院ほか

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2025年02月04日 AM09:20

抗精神病薬による体重増加「」の予測は困難だった

北海道大学病院は1月24日、抗精神病薬による体重増加の発生に関わる要因を同定したと発表した。この研究は、同大病院精神科神経科の石川修平助教、大久保亮助教、同大大学院医学研究院精神医学教室の橋本直樹准教授、澤頭亮助教、久住一郎名誉教授らの研究グループと同大遺伝子病制御研究所、同大病院医療・ヘルスサイエンス研究開発機構との共同研究によるもの。研究成果は、「Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

抗精神病薬は統合失調症や双極性障害の第一選択治療として広く推奨されているが、多様な副作用を伴うことが知られている。特に、抗精神病薬による体重増加(AIWG)は心血管疾患や早期死亡の主要なリスク因子であり、その予防が重要視されている。しかし、AIWGの発生には多くの要因が関与しており、実臨床でその発生を予測することは難しいのが現状だ。この課題を解決するため研究グループは、抗精神病薬による治療を開始または変更した時点における背景因子および薬剤関連因子が、AIWGの発生に与える影響を検証した。

研究では、全国44施設で新たに抗精神病薬が処方された865人の統合失調症、統合失調感情障害ならびに双極性障害の患者を対象に抗精神病薬が処方された後の体重増加の発生の有無を評価した。新たに抗精神病薬が処方された時点の背景因子(性別、年齢、治療歴、精神疾患の種類、入院・外来治療、喫煙・飲酒の有無、併存症の有無、食事療法・運動療法の有無)および薬剤関連因子(開始された抗精神病薬の種類、抗精神病薬の併用数、抗精神病薬の1日服用量、抗精神病薬・・気分安定薬の使用の有無と使用期間)と体重増加の発生との関連性をCox回帰分析で解析した。

服用者の約30%が1年以内に体重7%以上増、クロザピン・オランザピンでリスク2倍

その結果、262人(30.3%)が抗精神病薬開始後1年以内に体重が治療開始時点から7%以上増加。クロザピンおよびオランザピン治療の開始はアリピプラゾール治療の開始と比較して、AIWGの発生リスクがそれぞれ約2倍高いことが明らかとなった。一方で、ブロナンセリン治療の開始はアリピプラゾール治療の開始と比較して、AIWGの発生リスクが約2倍低いことが明らかとなった。

抗うつ薬は2年以内、気分安定薬は3か月以内の使用でリスク高まる

併用薬については、抗うつ薬(特にトラゾドン、セロトニン再取り込み阻害剤()、)および気分安定薬(特に炭酸リチウム、バルプロ酸)の併用が、AIWGの発生リスクをそれぞれ約2倍、約1.5倍高めることが明らかとなった。また、併用薬がAIWGの発生に与える影響は、新たに抗精神病薬を開始する時点での使用期間によって異なり、抗うつ薬は2年以内の使用、気分安定薬は3か月以内の使用でリスクが高まることが示された。

背景因子に関しては、初回治療および外来治療がAIWGの発生リスクをそれぞれ約2倍高めることが明らかとなった。さらに、新たに開始した抗精神病薬の薬理学的特徴、特に体重増加に関連するムスカリン受容体およびヒスタミン受容体の遮断作用の強さによって、背景因子や薬剤関連因子がAIWGの発生に及ぼす影響が異なることが示された。

服用開始前の背景・併用薬・使用期間等からAIWG発症リスクを事前に推定できる可能性

今回の研究により、AIWGの発生リスクに関わる要因が明らかにされた。その結果、新規に開始した抗精神病薬の種類に加え、抗精神病薬治療開始前の背景因子や併用薬の種類や使用期間を評価することで、AIWG発症リスクを事前に推定できる可能性が示された。

「本研究成果を実臨床で活用することで、抗精神病薬による体重増加の発症予防に貢献することが期待される」と、研究グループは述べている。

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