医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 難聴の認知症患者への看護介入、「対話支援機器」の有用性を検証-徳島大ほか

難聴の認知症患者への看護介入、「対話支援機器」の有用性を検証-徳島大ほか

読了時間:約 2分49秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2025年01月23日 AM09:00

難聴を伴う認知症の人に対する看護介入で「コミューン」が与える影響は?

徳島大学は1月15日、難聴を伴う認知症の方への看護介入における対話支援機器(指向性スピーカー)「(R)(コミューン)」の有用性を確認したと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学研究部の千葉進一准教授の研究グループと、ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社(以下、)の代表取締役・中石真一路氏らの共同研究によるもの。研究成果は、「四国医学雑誌」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

コミューンは世界初の耳につけない意思疎通支援機器。これまでは聴こえに悩んでいる人が自ら聴覚支援機器を装用する形が一般的だったが、装用する機器が苦手な人もおり、その場合は、周囲は大きな声での対応が一般的だった。コミューンは「話す側から意思疎通支援を行う」という逆転の発想から生まれたマイクとスピーカーから構成される対話支援機器。聴こえに悩む人と、その人に関わる健聴者の人との間に必要だったサポートが形になったとも言える。コミューンの活用による「聴こえのユニバーサルデザイン」は、医療機関や介護施設、薬局、行政機関を中心に5,700か所以上の施設で導入されている。

世界で最も高齢化が進んでいる日本では、65歳以上の50%に難聴があり、難聴は認知症発症リスクや認知機能低下、精神症状に影響を及ぼすことがわかっている。そこで研究グループは今回、難聴を伴う認知症の人に対する看護介入の際、コミューンを継続して用いることで、認知機能や認知症に伴う行動・心理症状、生活の質にどのような影響を与えるかについて研究を行った。

入院中で難聴の認知症患者4人を対象にコミューンを利用、心理尺度評価の変化を評定

具体的には、入院中で難聴を伴う認知症患者4人を対象に、看護師がコミューンを使用して関わり、「認知機能/Mini Mental State Examination-Japanese(MMSE)」「認知症に伴う行動・心理症状と看護師の職業負担度/Neuropsychiatric Inventory-Nursing Home Version(NPI-NH)」「認知症者の客観的な生活の質/Quality of Life of Dementia Japanese(QLDJ)」の項目について、介入開始前、開始1か月後、2か月後、3か月後で評価を行い、変化を追跡した。難聴の有無は語音聴取評価機器で評価し、難聴のある認知症患者だけを対象とした。

MMSEは、介入開始前、開始1か月後、2か月後、3か月後に、研究者が患者に実施した。また、開始1か月後、2か月後、3か月後に、患者を援助した看護師が、NPI-NHとQLDJで患者を評価した。なお、NPI-NHとQLDJを評価する看護師は1人に固定した。介入開始前、開始1か月後、2か月後、3か月後で、各心理尺度の評価の変化を評定した。

看護師による3か月の介入で認知機能改善・認知症の行動と心理症状軽減・生活の質向上

コミューンを使用した看護師の3か月間の介入の結果、2人の認知機能(MMSEスコア)が改善し、2人の認知症に伴う行動・心理症状(NPI-NHスコア)の軽減が確認された。生活の質(QLDJ)では、1人で周囲との生き生きとした交流、3人で自分らしさの表現、1人で対応困難な行動のコントロールの向上が見られた。

これらの結果から、認知症患者の「認知機能」や「認知症に伴う行動・心理症状」が改善される可能性、また、認知症患者の「生活の質」が向上し、患者と周囲の交流や自分らしさの表現が向上する可能性が示唆された。また、看護師の看護介入時の負担軽減にもつながる効果が期待される。

コミューンの活用が、難聴を伴う認知症患者に対する新しいケアの選択肢となる可能性

今回の研究成果により、コミューンによる補聴が認知症患者の認知機能や認知症に伴う行動・心理症状、客観的QOL、看護師の職業負担度に影響を与える可能性が示唆された。

「本研究により、コミューンの活用が難聴を伴う認知症患者に対する新たなケアの選択肢を提供し、患者が自分らしさを維持しながら生活できる環境づくりの促進に寄与することが示された。今後は、さらに多くの患者を対象にした臨床試験を通じて、コミューンがもたらす支援効果の確認と、看護介入の新しい手法としての普及に努めていく。そして、認知症ケアにおける技術活用の可能性をさらに追求し、患者やその家族、ケアに関わる全ての人たちの負担を軽減する一助となることを目指していく」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 脂肪細胞の体内時計機能低下がFGF21を介して肥満を促進-日大
  • IVLBCL初の臨床試験、中枢神経の病変抑制と長期有効性を確認-名大ほか
  • 大腸がん再発予測に、ctDNAを用いた個別化血液検査が有効と判明-岩手医科大ほか
  • 脳卒中患者、半側空間無視が改善後もHyperschematiaが継続する可能性-畿央大
  • 【インフル流行レベルマップ第6週】報告数減、36都府県で注意報・警報解除-感染研