精子形成中に生殖細胞で特異的に発現するサブユニットタンパク質COXFA4L3に着目
横浜市立大学は1月14日、男性不妊治療法の選択に有用な新規バイオマーカー(疾患の診断基準や程度などを示す指標となる物質)候補となるタンパク質を発見したと発表した。この研究は、同大附属市民総合医療センター 生殖医療センター部長の湯村寧准教授と同大大学院 工学研究院の栗原靖之教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Reproductive Medicine and Biology」オンライン版に掲載されている。

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精子形成に必要なエネルギーは精子内のミトコンドリアで生成される。このミトコンドリアが機能不全となった場合、男性不妊症を呈する可能性がある。そこで、研究グループは精子形成中に生殖細胞で特異的に発現するシトクロム酸化酵素の新興サブユニットタンパク質「COXFA4L3(C15ORF48)」に着目し、男性不妊症・精子のミトコンドリア機能不全のマーカーになり得るか否かを調べるため、男性不妊患者の精子におけるCOXFA4L3のタンパク質発現および局在プロファイルを調査した。
男性不妊症患者の精子内でCOXFA4L3が発現していると判明
研究では、横浜市立大学医療センター生殖医療センターの男性不妊症外来にて採取した27人の患者の精液サンプルを使用し、精子濃度・運動パラメータ・妊娠経過などとエネルギー産生関連タンパク質COXFA4L3の発現および局在を分析した。
その結果、患者により程度は異なったが、COXFA4L3が精子内で発現していることが判明した。さらにCOXFA4L3が通常とは異なる場所(精子の先体)に集まって発現しているものも見られた。また、自然妊娠・人工授精で妊娠した患者の精子では異所性発現の比率が低く、体外受精・顕微授精・妊娠しなかった患者では比率が高いということがわかった。これらのことから、COXFA4L3の異所的局在の程度が男性不妊症の治療法選択に有用であることが示唆された。
精子内COXFA4L3の局在確認で、患者に適した不妊治療法の提案が可能に
通常、COXFA4L3は精子のミトコンドリアに存在するタンパク質のため、ミトコンドリアが含まれる中片(精子の頭部と鞭毛の間にある器官)のみに存在するはずだが、異所的に発現している場合は精子のエネルギー産生に問題がある可能性がある。そのため、前もってCOXFA4L3の局在を評価することで、患者の精子が人工授精・体外受精など、どのような治療に適しているかを決める有用なパラメータになり得る。これにより、妊娠治療計画を迅速化できる可能性があると考えられる、と研究グループは述べている。
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・横浜市立大学 プレスリリース