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アスリート用ハムストリングスのコンディション評価HaOS日本語版を開発-広島大ほか

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2025年01月21日 AM09:00

ハムストリングス肉ばなれ発生率、ここ数十年改善なし

広島大学は1月9日、ノルウェーで作成された、ハムストリングスのコンディションを客観化できる、選手立脚型指標(Hamstring Outcome Score:)の国内での普及を目的として、日本語版を製作し、その妥当性および信頼性を検証した結果、日本語版HaOSは高い妥当性、信頼性を示し、また過去に肉ばなれの経験がある例とない例で得点が異なる傾向となることを示したと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科スポーツリハビリテーション学の前田慶明准教授、オスロ大学病院のAnders Hauge Engebretsen氏らの研究グループは述べているによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ハムストリングス肉ばなれは再発率が高いスポーツ傷害の代表例として知られ、多くの先行研究が発表されている。先行研究から、ハムストリングス肉ばなれを発症する選手はハムストリングスの筋力低下を呈していることや、初回の重症度が高いことは再発のリスクと指摘されている一方で、過去数十年でハムストリングス肉ばなれ発生率は減少していないことが問題視されている。これらはハムストリングス肉ばなれ発生に関与する因子が多岐に渡ることを示唆するものと考えられている。

スポーツ傷害の世界では、けがをした箇所のコンディションや選手の心理的不安などを客観的に得点化した「選手立脚型指標」を用いて再受傷予防につなげる取り組みがなされており、有益性も多く報告されている。しかしハムストリングス肉ばなれの予防に関する研究においては、筋力や関節可動域、また画像情報から得られた組織損傷に組織損傷に焦点を当てたものが大半を占めており、選手立脚型指標に関する調査は多くない。そこで研究グループは、過去に国外で有効性が報告されている、ハムストリングスに特化した選手立脚型指標である、HaOSが国内でも活用できるのかを検証した。

HaOS日本語版を作成、学生アスリート233人を対象に評価

HaOSは19個の質問からなる選手立脚型指標であり、総得点(0~100点)以外にも「Symptoms(例:スポーツ活動中の症状)」「Soreness(例:張りの程度)」「Pain(例:痛みの程度)」「Activity(例:活動の制限)」「Quality of life(例:不安や自信)」の5項目ごとにもハムストリングスのコンディションを点数化できる。

研究の流れとしては、事前にHaOS原作者であるDr. Anders(オスロ大学病院、医師)よる日本語訳の許可後、先行研究の方法に基づいて、段階的に作業を進めた。最終的にDr. Andersに正式に承認を得た。

その後、国内での信頼性を検証するために、日本語を母国語とする学生アスリート233人を対象に、日本語版HaOSに2度回答してもらい、同一人物の間で大きな誤差が生じていないかを確認した。次にハムストリングス肉ばなれの既往の有無で、日本語版HaOSの傾向に違いがみられるのかを検証した。

高い信頼性を確認、肉ばなれ既往歴の有無で得点の傾向に差

結果、日本語版HaOSには高い信頼性があること、またハムストリングス肉ばなれの既往がある群の方が、ない群と比較してHaOSが低値を示すことがわかった。さらに既往の回数を1回、2回以上(再発)に細分化し、既往無し群との3群で比較したところ、「Symptoms」「Soreness」「Quality of life」で有意差がみられ、特に「Quality of life」では、1度でも既往がある場合、回数に関わらず低値となっている結果が得られた。

以上のことから、日本語版HaOSは、これまで曖昧な表現のまま解釈されていた筋の張り感、さらに肉ばなれを起こしてしまうのではないかといった不安感までも客観化できる指標であることを示唆する結果となった。日本語版HaOSを作成したことで、ハムストリングスのコンディションを点数化でき、日本選手の微妙なコンディションの変化を誰もが簡便に把握できるようになると期待される。

基準値の明確などをさらに検証し、HaOSを競技復帰基準としての一指標に

今回は横断研究であったために、肉ばなれ既往の有無による日本語版HaOSの比較しかできていない。しかし、HaOSは日本において肉ばなれ受傷した選手の競技復帰基準や、選手の傷害予防にも応用できる可能性がある。これらを実現するためには、それぞれの基準値を明確にする必要(例:HaOSが何点以上であれば再発リスクが低い状態で競技復帰が可能/肉ばなれが発生しにくい)がある。「今後は、基準値を作成するために調査を進めていきたい。将来的には、日本語版HaOSを競技復帰基準としての一指標、そしてスポーツ現場での定期的なモニタリングによる傷害予防へと普及させていきたい」と、研究グループは述べている。

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