重症COVID-19患者家族のPTSD症状、18か月間追跡
東京科学大学は1月7日、集中治療室(ICU)に入室した重症COVID-19患者の家族における心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状の長期的な実態を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科生体集中管理学分野の野坂宜之准教授と若林健二教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Intensive Care」に掲載されている。

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集中治療室(ICU)での治療は、患者の家族にとって大きな精神的負担となることがあり、退室後も家族の生活に影響を及ぼす「家族の集中治療後症候群(PICS-F)」と呼ばれる現象が発生する。特にCOVID-19パンデミック下では、面会制限や経済的ストレスが重なり、家族の精神的健康に深刻な影響を与えた。
そこで今回の研究では、COVID-19患者の家族におけるPTSD症状の長期的な経過を18か月間にわたって追跡し、その実態を明らかにした。具体的には、重症COVID-19患者がICUを退室した後の家族を対象に、6か月、12か月、18か月後の追跡調査を実施した。
PTSD症状あり家族は継続して一定割合確認、不安やうつ症状併発も多い
研究の結果、重症COVID-19患者の家族でPTSD症状が26%に見られることを確認。PTSD症状を呈する家族は、6か月、12か月、18か月後それぞれ16%、23%、25%と継続して一定の割合で確認された。PTSD症状を有する家族では、健康関連の生活の質(HRQOL)を示す指標が有意に低下しており、不安やうつ症状を併発する家族も多いことがわかった。
家族15%に遅発性PTSD、早期段階で他の心理症状示す傾向
さらに、患者がICUを退室した後に遅れてPTSD症状が出現する「遅発性PTSD」が15%の家族に認められた。この遅発性PTSD症状を呈した家族には、早期の段階から他の心理症状(不安・抑うつ)を示す傾向があることが確認された。
患者だけでなく「家族」も長期間の精神的苦痛あり、サポート体制構築を
重症COVID-19患者はICUを退室した後も、さまざまな困難に直面し、その影響が長期化していることが知られている(集中治療後症候群(PICS))。今回の研究では、患者だけでなく、その家族にも長期間にわたり精神的苦痛を抱える方が一定の割合で存在することが明らかになった。これらの結果は、重症患者だけでなく、その家族に対しても長期的なサポート体制を構築する必要性を強く示唆している。
研究グループは、同研究成果を基に、ICUに入室した患者の家族に対する早期介入や長期的な支援体制の構築を目指すとしている。これにより、家族が抱える心理的負担の軽減を図り、生活の質を向上させるための具体的な支援策を検討していく、と研究グループは述べている。
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