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CGP検査を利用しctDNAから病勢評価する方法開発-岩手医科大ほか

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2025年01月17日 AM09:30

標準治療終了時に実施されるがんゲノムプロファイリング検査、次治療に至る割合低い

岩手医科大学は1月9日、がんゲノムプロファイリング()検査を施行した患者のデータを活用し、がん細胞由来の血中DNA()をデジタルPCR(dPCR)を用いて測定することで、がんの再発予測や治療効果の評価が可能であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医歯薬総合研究所医療開発研究部門の佐々木太雅大学院生、西塚哲特任教授、東北大学病院腫瘍内科の城田英和准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cancer Science」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本では悪性腫瘍(がん)により、毎年約38万人が死亡している(死因の第1位)。一般に切除不能な進行がんは根治療法ではなく生命予後を延長するための全身化学療法が行われる。治療薬の種類や数は罹患臓器によって決められており、治療薬の種類が少ないがんも存在する。

CGP検査は、悪性腫瘍(がん)の標準治療が終了となった、もしくは終了が見込まれる患者に次治療(治験を含む)を提案するため、保険診療としての実施が認められている。具体的には、患者のがん組織または血液を用いて、次世代シークエンシング法を用いてがんに関連する遺伝子変異を見つける方法を用いる。この方法の問題点として、1)1回の検査と結果説明で56万円と高額であること(3割負担で16万8000円)、2)がんに関連する遺伝子が見つかったとしても次治療に到達する割合が10%以下と低いこと、3)次治療の提案がない場合の検査結果の使用法がないこと、などが挙げられる。

CGP検査を利用し早期再発予測や治療効果判定などを評価するOTS-アッセイ

研究グループは、今回、岩手医科大学附属病院で行われたCGP検査の結果を明らかにした上で、そのCGP検査を利用し、dPCRによるctDNA測定(Off The Shelf-アッセイ、以下OTS-アッセイ)を行った。OTS-アッセイは、岩手医科大学で独自に開発されたdPCRによるctDNAの定量システムだ。先行研究では、食道がん、大腸がん、尿路上皮がん、膀胱がんなどに対して、「早期再発予測」、「」、「無増悪確証」などについて評価可能であることが明らかになっている。

CGP検査を目的に登録された患者データとOTS-アッセイの結果から臨床的妥当性を評価

2019年10月から2023年4月までの期間に東北大学病院個別化医療センターにCGP検査を目的に登録された岩手医科大学附属病院の患者データを用い、がんの種類、次治療が提案された割合、実際に次治療が行われた割合を調べた。その後、OTS-アッセイに同意が得られた症例で、「早期再発予測」、「治療効果判定」、「無増悪確証」に対して臨床的妥当性の評価を行った。「早期再発予測」は「CTなど画像検査に先だって変異アリル頻度(VAF)が上昇していること」、「治療効果判定」は、「治療内容に一致してVAFが変化すること」、「無増悪確証」は「臨床的無再発・無増殖に一致してVAFが検出感度以下を維持していること」と定義した。OTS-アッセイでは、CGP検査はOTS-Scanに該当する。OTS-Scanの結果から遺伝子変異を1~3個選択(OTS-Select)し、定期的採血により血液中の遺伝子変異をdPCRで定量(OTS-Monitor)した。

11例でctDNAのモニタリングを実施、45%で早期再発予測・90%で治療効果判定を確認

今回の研究期間中に219例のCGP検査が行われた。臓器別では、前立腺がん(12.3%)、大腸がん(11.4%)、肺がん(8.7%)の順に多く、遺伝子変異に紐づく次治療が提案された症例は33例(15.1%)、提案された次治療が実際に投与された割合は14例(6.4%)だった。

dPCRによるctDNAのモニタリングを行った症例は11例(肺がん、大腸がん、胆管がん、膵がん、肛門管がん、皮膚がん、消化管間質腫瘍)であり、そのうち早期再発予測は5例(45.5%)、治療効果判定は10例(90.9%)、無再発・無増殖確証は2例(18.2%)で確認できた。全体として、11例中10例(90.9%)で、「早期再発予測」、「治療効果判定」、および「無再発・無増殖確証」のうち少なくとも一つの有効な判定が得られた。

岩手医科大学附属病院でのCGP検査が次治療に結びつく割合は概ね国内他施設と同等だった。次治療提案の有無に関わらず、がんに関連する遺伝子変異が見つかっている場合には、OTS-アッセイを用いた病勢評価を行うことでゲノムデータの有効活用が可能となることが示された。

次治療につながらない場合でも、CGP検査を有効に利用

今回、CGP検査を行ったにもかかわらず次治療の提案がなかった患者でも、OTS-アッセイを用いた病勢評価を行うことができることが明らかになった。

一方、今回の研究ではOTS-アッセイを行った症例数が少ないため、進行がん全体の傾向を結論づけることはできなかった。「今後はより多岐にわたるがんの種類、多くの症例でOTSアッセイの臨床的妥当性を確認するための研究が必要。岩手医大附属病院では2022年4月よりOTS-アッセイを自由診療として開始している。データを集積してより受けていただきやすい検査体制を構築する」と、研究グループは述べている。

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