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もの忘れ外来受診者約8,000組が対象の研究「NCGG-STORIES」、成果発表-長寿研

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2024年09月24日 AM09:30

世界最大規模の基盤研究、診断後の医療・介護・意思決定などを詳細に追跡

国立長寿医療研究センターは8月28日、同センターの「もの忘れ外来」の受診者およびその家族を対象とした研究プロジェクト「(National Center for Geriatrics and Gerontology–Life STORIES of People with Dementia)」について、これまでに論文発表されている複数の研究成果をまとめ、発表した。研究成果は「International Journal of Geriatric Psychiatry」などに掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

NCGG-STORIESは2022年から開始されたプロジェクト。対象者は、2010年6月から現在までの十数年間に同センターもの忘れ外来を受診した患者と家族のうち、研究利用に同意の得られた約8,000組で、世界最大規模の基盤研究となる。診療データに加え、ゲノムや頭部MRI情報が含まれており、診断後の医療や介護、緊急入院、終末期ケア、意思決定などのライフストーリーを、公的データやアンケート調査を用いて詳細に追跡している。認知症ケアに関する新しい知見を得て、より適切な医療・介護の提供体制を整え、必要な支援や政策の提言を行い、認知症の人とその家族の生活の質を向上させることを目指している。

研究だけでなく実践や実装にも活用できる。例えば、得られた知見をもとにした科学的に裏付けられた政策を立案することで、現場でより効果的な支援が提供できるようになる。また、民間企業も知見を活用して、認知症の人やその家族に向けた新しいサービスや製品の開発、既存のサービスの改善を図ることが期待される。これにより、認知症ケアの質の向上とともに、共生社会の実現に向けて、社会全体で認知症の課題に取り組むための基盤強化が期待できる。

MCIや認知症の人の早期死亡を予測するリスクスコア開発

今回、同センターは研究成果のうち、国際学術誌に掲載された4つについて概要をまとめた。

1つ目は、認知症の人の早期死亡を予測するリスクスコアの開発(Sugimotoら2023)である。NCGG-STORIESの参加者がもの忘れ外来を初めて訪れた際に収集されたデータを活用し、死亡リスクを予測するモデルを作成した。対象となった2,610人のうち、中央値4.1年の追跡期間で544人が死亡していた。予測モデルには、年齢 (70~79歳:+3点、80~84歳:+4点、85歳以上:+6点)、性別 (男性:+4点)、BMI (やせ:+1点、 過体重:-1点)、歩行速度の低下 (+1点)、身体不活動 (+1点)、手段的日常生活動作の障害 (+1点)、MMSE (認知機能評価) (11~20点:+2点、10点以下:+3点)、肺疾患 (+1点)、 (+1点)が含まれた。この予測モデルの点数範囲は-1から19点とされ、この予測モデルの予測力は高いことがわかった。

6つの認知症タイプ別に死亡リスクと死因を解析

2つ目は、認知症タイプ別の死亡リスクと死因 (Onoら,2023)に関する研究である。NCGG-STORIESから3,229人のデータを用いて、認知機能正常(NC)、(MCI)、、血管性認知症、(DLB)、前頭側頭葉変性症の6グループ別の死亡リスク、死因、予後因子を検証した。その結果、すべての認知症タイプおよびMCIの人はNCの人に比べて死亡リスクが高く(ハザード比2.61-5.20)、DLBの人はADの人よりもさらに死亡リスクが高いことがわかった。最も一般的な死因は肺炎であり、次いでがんとなった。早期死亡とAPOE4遺伝子保有との関連は認められなかった。この研究結果は、認知症タイプ別の死亡リスクと死因を示す貴重な資料として、今後の高齢者医療の計画と政策策定に役立つことが期待される。

血糖コントロール状況が認知症の人の予後に及ぼす影響も調査

3つ目は、認知症の人の血糖コントロール状況が予後に及ぼす影響(Sugimotoら,2024)である。血糖管理状況は、日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会が提唱した血糖管理目標値を基準とした。解析対象は1,996人で、そのうち468人が糖尿病を有していた (血糖管理良好群:317人、高血糖群:94人、低血糖群:57人)。調査の結果、非糖尿病患者と比較して、高血糖群および低血糖群は死亡リスクが高いことが示され、血糖管理良好群では、統計的に有意な死亡リスクの増加は見られないことを確認した。このことから、高齢者糖尿病診療ガイドラインに沿った血糖管理を達成することで、糖尿病患者の寿命延伸につながる可能性が明らかになった。

認知症の行動・心理症状を最大8年追跡調査、死亡リスクが高くなる要因判明

4つ目は、認知症の行動・心理症状 (Noguchiら,2024)に関する研究である。軽度認知障害または認知症の診断を受けた2,746人を最大8年間追跡し、初診時におけるDementia Behavior Disturbance Scaleにより評価した行動・心理症状と早期死亡との関係性を分析した。結果、男性において行動・心理症状が強いと死亡リスクが高く、また症状のうち、日常生活への関心の欠如、日中の過度な睡眠、介護拒否の項目は特に高い死亡リスクと関係した。研究成果は、認知症の人の予後改善に対して行動・心理症状の評価と適切な対処が重要であることを示した。

2024年度から医療と介護のレセプト情報が統合、新たな分析が可能に

NCGG-STORIES のデータは、2024年度から新たに医療と介護のレセプト情報が統合される。これにより、初診から治療、介護、そして死亡に至るまでの一連の過程を追跡することが可能となり、認知症の人のライフストーリーが明らかになると考えられる。この統合データにより、診断後から死亡に至るまでの介護費用の算出や医療・介護サービスの効果分析も可能になる。「認知症ケアの質を向上させ、認知症の人やその家族により適切な支援を提供するための貴重な科学的根拠が得られることが期待される」と、研究グループは述べている。

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